Adobe Premiere Proの「Ultraキー」エフェクトは、クロマキー合成を行う上で非常に強力なツールです。しかし、一度エフェクトを適用しただけで背景が完璧に抜け切るケースは稀です。特に、グリーンバックに光のムラや影がある場合、背景色を完全に除去するのは困難になります。この課題を解決し、プロレベルのクロマキー合成を実現するためには、Ultraキーの詳細設定を理解し、適切に調整することが不可欠です。
このページでは、Ultraキーエフェクトの各パラメータを詳細に解説し、一発で抜けきらない背景を美しく処理するための具体的な方法をご紹介します。さらに、合成の品質を左右する撮影時のポイントも網羅し、読者の皆様がより高品質な映像制作を行えるようサポートします。
クロマキー合成の精度を飛躍的に高めるUltraキー詳細設定
Premiere Proが多くのプロフェッショナルに選ばれる理由の一つに、その優れたクロマキー合成機能が挙げられます。最近では、自宅で撮影した動画をYouTubeなどで配信する方も増えており、ゲーム実況のワイプ画面などでも、キーイング合成によって人物だけを簡単に合成することが可能です。しかし、クロマキー合成は一度の操作で完璧になることは稀であり、様々なパラメータを調整して色域の指定を正確に行う必要があります。Ultraキーエフェクトでできる調整を一つずつ見ていきましょう。
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ステップ1:アルファチャンネルでマットの状態を確認する
クロマキー合成の調整を行う上で、最も重要かつ基本的なステップが「アルファチャンネル」での確認です。デフォルトの「出力」項目が「コンポジット」になっている状態では、最終的な合成結果が表示されますが、これではどこが抜けきれていないのか、どこにノイズが残っているのかを正確に判断することは困難です。
「出力」の項目を「アルファチャンネル」に切り替えることで、映像が白黒の表示に変わります。この白黒の画面は、透明にする領域(黒)と透明にしない領域(白)を明確に区別して表示します。アルファチャンネルは、透明度をコントロールするためのチャンネルであり、このマットを正確に仕上げることが最終的な合成品質に直結します。
まずはこのアルファチャンネル表示に切り替え、どこが抜けていてどこが残ってしまっているのかを正確に確認することから始めましょう。

アルファチャンネルで被写体が真っ白、背景が真っ黒になるのが理想です。グレーの部分は半透明になっているので、調整が必要です。
ステップ2:マットの生成でキーイングの強度を調整する
背景の抜け具合が不十分な時に、まず最初に試すべき項目が「設定」です。この「設定」を「強」に変更すると、色の抜き具合が少し強くなります。しかし、「強」にしても理想的な抜け方にならない場合も多いため、その場合はオプションとして用意されている各パラメータから微調整を行っていきます。
透明度やハイライト、シャドウなどの項目から、それぞれの領域に対するキーイングの強度を調整できます。少し調整するだけでも、消えていない部分を消すことが可能です。必要な調整内容は各クリップごとに異なるため、アルファチャンネルで確認しながら最適な調整を行いましょう。
- 透明度:背景をキーイングしたときのソース画像の透明度を調整します。100は完全に透明、0は完全に不透明になります。
- ハイライト:ソース画像の明るい領域の不透明度を調整できます。グリーンバックに明るいムラがある場合に有効です。
- シャドウ:ソース画像の暗い領域の不透明度を調整できます。グリーンバックに影が映り込んでいる場合に有効です。
- 許容度:選択したキーカラーの強さや範囲を調整します。値を上げれば色の範囲が広がり、抜ける領域も広くなります。
- ペデスタル:アルファチャンネルからノイズを除去し、光量の低い素材のキーを改善します。特に暗い部分のノイズ除去に役立ちます。

「許容度」は、キーカラーの許容範囲を広げることで、色ムラのあるグリーンバックでも広範囲にキーを適用できます。ただし、上げすぎると被写体まで抜けてしまうので注意が必要です。
ステップ3:マットのクリーンアップでエッジを調整する
「マットのクリーンアップ」の項目からは、透明にする領域を縮小したり、エッジをぼかしたりすることができます。被写体の輪郭をより自然に見せるために、よく使われる機能です。
- チョーク:アルファチャンネルマットのサイズを縮小します。被写体のエッジにわずかに残るグリーンを内側に引き締める際に有効です。
- 柔らかく:アルファチャンネルマットのエッジをぼかします。被写体の輪郭をより自然に、背景になじませるために使用します。特に髪の毛など、細かい部分の処理に効果的です。

「チョーク」は、エッジを内側に少し縮めることで、残ってしまったグリーンのフリンジ(縁取り)を目立たなくできます。ただし、やりすぎると被写体が痩せて見えるので注意しましょう。
ステップ4:スピルサプレッションで色かぶりを除去する
スピルサプレッションの項目は、グリーンバックの色が被写体(髪や洋服など)に反射して映り込んでいる「スピル(色かぶり)」を除去するために使用します。例えば、白いTシャツでグリーンバック撮影を行うと、Tシャツに緑色が反射して映り込んでしまうことがよくあります。これらの反射して映り込んだカラーを除去する機能をスピルサプレッションと呼びます。
- 彩度を下げる:ピクセルから既に完全な透明に近いカラーを除去します。
- 範囲:補正するスピルカラーの量をコントロールします。

スピルサプレッションは、特に肌の色や白い服にグリーンが映り込んでしまった場合に効果的です。調整しすぎると色が不自然になることもあるので、プレビューで確認しながら慎重に行いましょう。
ステップ5:カラー補正(必要に応じて)
カラー補正のパラメータからは、色調補正を加えることができます。色調補正は、別のエフェクト(例:Lumetriカラー)経由で適用することも可能ですが、Ultraキーエフェクト内だけで処理を完結させたい場合には、ここから簡易的なコントロールを加えることもできます。
ただし、色調補正は自分の使い慣れたエフェクトが他にあるという方も多いため、あえてUltraキーエフェクト内で行う必要はありません。
- 彩度:彩度をコントロールできます。
- 色相:色相をコントロールできます。
- 輝度:輝度をコントロールできます。
さらに精度を高める応用テクニック
Ultraキーエフェクトの各パラメータを全て調整しても、どうしても一部が残ってしまうケースは珍しくありません。そのような場合に活用できる、さらに高度なテクニックをご紹介します。
Ultraキーエフェクトの多重掛け(ネスト化の活用)
Ultraキーエフェクトのパラメータを最大限に調整しても、背景のムラや影が原因で完全に抜ききれないことがあります。このような時に有効なのが、Ultraキーエフェクトの「多重掛け」というテクニックです。
Ultraキーエフェクトを適用したクリップを一度ネスト化してから、再度Ultraキーエフェクトを適用することで、キーイングを適用したクリップにさらにキーイングをもう一度適用することが可能になります。
1度目のクロマキーで抜ききれない部分を、2回目のUltraキーのパラメータを調整して抜いていきましょう。このテクニックは、After Effectsでキーイングを行う際に、複数回キーイングエフェクトを適用して、内側とエッジ部分などに分けてアルファマットを作成していくのと同様の考え方です。

ネスト化は、複数のエフェクトをまとめて適用したり、複雑なレイヤー構造を整理したりする際にも非常に便利です。クロマキー合成以外でも活用できるので覚えておきましょう。
マスクと組み合わせる
Ultraキーエフェクトだけでは除去しきれない、画面の端に残ってしまった不要な部分(例:グリーンバックの端、撮影機材の映り込みなど)は、マスク機能と組み合わせることでより効率的に処理できます。Premiere Proのマスク機能を使って、不要な部分を囲み、その部分だけを透明にしたり、逆に残したりすることが可能です。
例えば、被写体の周りに大まかにマスクを作成し、その内側でUltraキーを適用することで、キーイングの範囲を限定し、より正確な抜き出しを行うことができます。また、被写体の動きに合わせてマスクを追従させる「マスクのトラッキング」機能も活用すると、さらに自然な合成が実現します。

高品質なクロマキー合成のための撮影のコツ
どんなに優れた編集ソフトやエフェクトを使っても、元となる素材の品質が低ければ、完璧なクロマキー合成は困難です。高品質なクロマキー合成を実現するためには、撮影段階での工夫が非常に重要になります。
均一なライティングの重要性
グリーンバックを綺麗に抜くためには、背景にムラなく均一な光を当てることが最も重要です。影や光の強さのばらつきがあると、Ultraキーエフェクトが背景色を正確に認識できず、抜け残りが生じやすくなります。
- 背景へのライティング:グリーンバック全体に均等に光が当たるように、複数のライトを使用しましょう。特に、背景の上下や端に影ができやすいので注意が必要です。
- 被写体と背景の分離:被写体とグリーンバックの距離を十分に離すことで、被写体の影が背景に落ちるのを防ぎ、また、グリーンバックからの色かぶり(スピル)を軽減できます。
- 被写体へのライティング:被写体にも適切なライティングを行い、明るさと影のバランスを整えましょう。特に、被写体のエッジがはっきりと見えるようにすることが重要です。

自宅での撮影では、プロのような完璧なライティングは難しいかもしれません。しかし、最低限、グリーンバックにシワがないか、影が大きく落ちていないかを確認するだけでも、編集時の手間を大幅に減らせます。
グリーンバックの準備と被写体の服装
- シワや汚れの排除:グリーンバックにシワやたるみがあると、そこに影ができやすく、キーイングの精度が低下します。使用前にアイロンをかけるなどして、できるだけ平滑な状態にしましょう。
- 被写体の服装:被写体がグリーン系の服を着ていると、背景と一緒に服も抜けてしまう可能性があります。背景色とは対照的な色(赤、青、黒など)の服を選ぶようにしましょう。
- 反射するものの排除:メガネやアクセサリーなど、光を反射しやすいものは、グリーンバックの色を映り込ませてしまうことがあります。可能な限り外すか、反射しにくい素材を選びましょう。

まとめ:クロマキー合成は根気と経験が鍵
Premiere ProのUltraキーエフェクトを使えば、基本的なグリーンバック合成は簡単に行うことができます。しかし、初心者の方が想像するように、エフェクトを適用しただけで完全に緑の領域が全て綺麗に消えてくれるということはまずありません。
撮影時に映り込んだ影や、光の減衰している領域は、そのままUltraキーエフェクトでも色域の違う領域として認識されます。Ultraキーエフェクトには詳細設定できる項目が豊富にありますので、それぞれのプロパティを実際に調整してみて、どのように合成クリップのアルファチャンネルが変化するかを確認してみましょう。正しくアルファチャンネルが設定されている状態になれば、白い色で残す素材がはっきりと塗りつぶされる形になります。
クロマキー合成は意外と地味で根気のいる作業の一つですが、自分の得意なパターンを見つけて、できるだけ短時間で処理ができるようになりましょう。撮影時点で影や光の減衰が起きにくいライティングを探しておくのも、品質を上げるための重要なポイントです。
経験を積むことで、どのような素材に対してどのパラメータを調整すれば良いか、直感的に判断できるようになります。様々な素材で試行錯誤を繰り返し、あなた自身のクロマキー合成の「プロの秘訣」を見つけてください。

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