Premiere Proを使った動画編集では、15分、30分、さらには1時間にも及ぶ長編ムービーを作成する機会が頻繁にあります。YouTube用の動画を制作している方の中には、再生時間を長くするために長尺のムービーを意識して作っている方も多いでしょう。このような長編ムービーを編集する際、タイムライン内でクリップを移動させるのに、ドラッグ&ドロップだけでは操作がしにくい場面がしばしば発生します。
特に移動距離が長くなる場合や、複数のクリップを正確に配置したい場合には、カット&ペーストやコピー&ペーストが最も効率的で簡単な方法となります。Premiere Proには、これらの基本的な操作に加え、さらに便利なペースト機能が多数搭載されています。この記事では、Premiere Proの動画編集を飛躍的に効率化するための、カット、コピー、そしてペーストの基本から応用までを徹底解説します。
Premiere Proにおけるクリップの移動・複製方法の基本
動画編集プロジェクトが複雑化したり、長尺になったりすると、タイムライン内でのクリップ管理は非常に重要になります。クリップ(動画、写真、音声など)の移動は、ドラッグ&ドロップでも可能ですが、タイムラインの表示範囲を超えるような長距離の移動や、複数のクリップをまとめて操作する場合には、より効率的な方法を知っておくことが不可欠です。
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ドラッグ&ドロップによる基本的なクリップ移動
タイムライン上でクリップを選択し、そのままドラッグすることで、視覚的にクリップを移動させることができます。これは、タイムラインの表示範囲内での微調整や、隣接するクリップとの位置関係を確認しながら移動する際に非常に便利です。しかし、タイムラインの端から端までクリップを移動させるような場合、スクロールしながらドラッグし続けるのは手間がかかります。このような時に、カット&ペーストやコピー&ペーストが真価を発揮します。
ドラッグ&ドロップは直感的で分かりやすい操作ですが、長尺のプロジェクトでは移動距離が長くなり、効率が落ちる可能性があります。状況に応じて他の方法と使い分けましょう。
Alt/Option + ドラッグによるクリップの複製
同じクリップを複製して使いたい場合、コピー&ペースト以外にも非常に便利な方法があります。それは、Altキー(Macの場合はOptionキー)を押しながらクリップをドラッグする方法です。これにより、元のクリップを保持したまま、簡単に複製を作成し、任意の場所に配置できます。これは、テロップやロゴ、特定の効果を適用したクリップなどを繰り返し使用する際に特に役立ちます。

同じデザインのテロップや、共通のエフェクトを適用したクリップを素早く増やすなら、Alt/Option + ドラッグが断然おすすめです!
カット&ペーストとコピー&ペーストの基本操作
Premiere Proでの動画編集において、クリップのカット、コピー、ペーストは最も頻繁に使う基本操作です。これらのショートカットを習得することで、編集速度が格段に向上します。一般的なPC操作と同じショートカットが適用されているため、一度覚えてしまえば他のソフトウェアでも応用が利きます。
クリップのカット(切り取り)とペースト
クリップをタイムライン上の別の場所に移動させたいが、元の場所には残したくない場合に「カット」を使用します。カットしたクリップはクリップボードに一時的に保存され、任意の場所に「ペースト」することで配置できます。
- カット(切り取り): カットしたいクリップを選択し、右クリックメニューから「カット」を選択するか、ショートカットキー
Ctrl + X
(Macの場合はCommand + X
)を使用します。 - ペースト: カットしたクリップを配置したいタイムライン上の位置に再生ヘッドを移動させ、上部メニューの「編集」から「ペースト」を選択するか、ショートカットキー
Ctrl + V
(Macの場合はCommand + V
)を使用します。
カット&ペーストは、クリップを完全に別の場所に移動させたい場合に最適です。元の場所には空白(ギャップ)が生まれます。
コピー&ペースト
シーケンス内で同じクリップを複製して使いたい場合に「コピー」を使用します。デザイン要素や、同じアニメーション、エフェクトを適用したクリップを複製する際に頻繁に利用します。
- コピー: コピーしたいクリップを選択し、右クリックメニューから「コピー」を選択するか、ショートカットキー
Ctrl + C
(Macの場合はCommand + C
)を使用します。 - ペースト: コピーしたクリップを配置したいタイムライン上の位置に再生ヘッドを移動させ、ショートカットキー
Ctrl + V
(Macの場合はCommand + V
)を使用します。
ペーストの種類:上書きペーストとインサートペースト
Premiere Proのペーストには、主に2つの挙動があります。デフォルトのCtrl + V
(Command + V)は「上書きペースト」と呼ばれることが多く、もう一つは「インサートペースト」です。
上書きペースト(通常のペースト)
Ctrl + V
(Command + V)で実行される通常のペーストは、再生ヘッドの位置にある既存のクリップを「上書き」します。つまり、ペーストされたクリップの長さ分だけ、既存のクリップが削除される形になります。

既存のクリップを新しい素材で置き換えたい場合や、特定の尺に合わせて素材を挿入したい場合に便利です。意図せず既存のクリップを消してしまわないよう注意しましょう。
インサートペースト
インサートペーストは、コピーまたはカットしたクリップを、再生ヘッドの位置に「挿入」します。この際、既存のクリップは上書きされることなく、後方に押し出されます。これにより、タイムライン全体の尺がペーストしたクリップの長さ分だけ伸びます。
- ショートカット:
Ctrl + Shift + V
(Macの場合はCommand + Shift + V
)
長尺の動画クリップの中間に、タイトル画面、キャプション、テロップ、または一時的な別画面などを挿入したい場合に非常に便利な方法です。他のトラックに配置されているクリップも全て連動して後方にリフトされるため、全体のタイミングを崩さずに挿入できます。
ペースト先のトラックを正確に指定する方法
コピーやカットしたクリップをペーストする際、どのトラックに配置されるかを正確に指定することは、複雑なプロジェクトを管理する上で非常に重要です。Premiere Proでは、タイムラインの左側にある「ソースパッチ」または「トラックターゲット」と呼ばれるボタンで、ペースト先のトラックを制御できます。
- トラックターゲットの指定: タイムラインの左側にある「V1」「V2」「A1」「A2」といったボタンがトラックターゲットです。青くハイライトされているトラックが、ペーストのターゲットとなります。
- ON/OFFの切り替え: ペーストしたいトラックのボタンをクリックしてON(青色)にし、ペーストしたくないトラックのボタンはOFF(灰色)にします。例えば、V3トラックにペーストしたい場合は、V3のみをONにし、他のV1やV2はOFFにすることで、意図したトラックに正確にペーストできます。

特に複数のビデオトラックやオーディオトラックを使用している場合、このトラックターゲットの指定は必須です。ペーストする前に必ず確認する習慣をつけましょう。
【重要】バージョンアップによるCtrl+Vの挙動変更と対処法
Premiere Proの特定のバージョンアップ(例: 2023年以降のバージョン)において、Ctrl + V
(Command + V)のデフォルトの挙動が変更され、コピー元のトラックと同じトラックにペーストされるようになった、という報告が多数あります。以前は「ターゲットトラックにペースト」がデフォルトでしたが、これが「同じトラックにペースト」に変わったことで、多くのユーザーが混乱しました。
もし、意図しないトラックにペーストされてしまう場合は、以下の手順でキーボードショートカットの設定を確認・変更してください。
- Premiere Proのメニューバーから「編集」>「キーボードショートカット」を選択します。
- 検索窓に「ペースト」と入力します。
- 「パネル:タイムラインパネル」の項目を確認します。
- 「同じトラックにペースト」に
Ctrl + V
が割り当てられている場合、「ターゲットトラックにペースト」の項目を選択し、キーボードでCtrl + V
を入力して割り当てを変更します。 - 「OK」をクリックして設定を保存します。
この設定変更は、特にバージョンアップ後にペーストの挙動がおかしいと感じた場合に試すべき重要な対処法です。自分の編集スタイルに合わせて設定をカスタマイズしましょう。
さらに効率を高めるペースト機能:属性のペースト
単にクリップを複製するだけでなく、あるクリップに適用したエフェクト、モーション、タイムリマップなどの「属性」だけを別のクリップにコピー&ペーストできるのが「属性のペースト」です。これは、同じ視覚効果や動きを複数のクリップに適用したい場合に、一つずつ設定する手間を省き、作業効率を大幅に向上させます。
- 操作方法:
- 属性をコピーしたいクリップを選択し、
Ctrl + C
(Macの場合はCommand + C
)でコピーします。 - 属性をペーストしたいクリップを選択します(複数選択も可能)。
- 右クリックメニューから「属性をペースト」を選択するか、ショートカットキー
Ctrl + Alt + V
(Macの場合はCommand + Option + V
)を使用します。 - 表示されるダイアログボックスで、ペーストしたい属性(例:モーション、不透明度、タイムリマップ、エフェクトなど)にチェックを入れて「OK」をクリックします。
- 属性をコピーしたいクリップを選択し、

動画の冒頭や終わりに共通のズームイン/アウト効果をつけたい、複数のテロップに同じドロップシャドウを適用したい、といった場合に「属性のペースト」は非常に強力な味方になります。
複数のクリップをまとめて移動・複製するテクニック
Premiere Proでは、複数のクリップを一度に選択し、まとめて移動、カット、コピー、ペーストすることが可能です。これにより、大規模な編集作業や、シーン全体の配置変更が格段に効率化されます。
- 複数選択の方法:
- Shift + クリック: 連続していない複数のクリップを選択する場合、Shiftキーを押しながら各クリップをクリックします。
- ドラッグ選択(囲み選択): 選択ツール(V)を選択した状態で、タイムライン上でドラッグして、選択したいクリップを囲みます。
- トラック選択ツール: 特定のトラック上のクリップをまとめて選択したい場合は、トラック選択ツール(A)が便利です。前方または後方のクリップをまとめて選択できます。
- まとめて操作: 複数選択した状態で、通常のカット(Ctrl+X)、コピー(Ctrl+C)、ペースト(Ctrl+V)、インサートペースト(Ctrl+Shift+V)を実行することで、選択した全てのクリップがまとめて操作されます。

まとめと実践的なアドバイス
Premiere Proにおけるカット、コピー、ペーストは、単なる基本操作に留まらず、その応用によって動画編集の効率と精度を大きく左右する重要なスキルです。特に長尺のムービーや複雑なプロジェクトでは、これらの機能を使いこなすことで、作業時間を大幅に短縮し、よりクリエイティブな作業に集中できるようになります。
主要なショートカットキーの再確認
これらのショートカットはPremiere Proだけでなく、多くのPCソフトウェアで共通して利用できるため、ぜひ習得しておきましょう。
操作 | Windows | macOS | 備考 |
---|---|---|---|
コピー | Ctrl + C |
Command + C |
クリップ、エフェクト、属性などをコピー |
カット | Ctrl + X |
Command + X |
クリップを切り取り、元の場所から削除 |
ペースト(上書き) | Ctrl + V |
Command + V |
再生ヘッドの位置に上書きして挿入 |
インサートペースト | Ctrl + Shift + V |
Command + Shift + V |
再生ヘッドの位置に挿入し、後続クリップを押し出す |
属性のペースト | Ctrl + Alt + V |
Command + Option + V |
エフェクトやモーションなどの属性のみをペースト |
複製(ドラッグ) | Alt + ドラッグ |
Option + ドラッグ |
クリップをドラッグしながら複製 |
これらの機能を習得し、状況に応じて使い分けることで、Premiere Proでの動画編集はよりスムーズで快適なものになるでしょう。日々の編集作業に積極的に取り入れ、効率的なワークフローを確立してください。

