AviUtlでの動画編集中に「操作を間違ってしまった」「前の状態に戻したい」と感じる経験は、誰しもが一度はするものです。これはAviUtlに限らず、あらゆるソフトウェアで起こりうる一般的な状況です。しかし、適切な知識と対策があれば、間違った操作から簡単に元の状態に復元し、大切な編集データを守ることができます。
このページでは、AviUtlで一つ前の状態に戻る方法から、さらに一歩進んだデータ保護のテクニックまで、プロの視点から詳しく解説します。予期せぬトラブルに慌てることなく、安心してクリエイティブな動画編集に集中できるよう、ぜひ最後までお読みください。
AviUtlで操作を「元に戻す(Undo)」基本操作
動画編集作業において、誤ってオブジェクトを削除してしまったり、意図しないエフェクトを適用してしまったりすることは頻繁に起こります。そんな時に役立つのが「元に戻す(Undo)」機能です。
最もよく使うショートカット:Ctrl + Z
AviUtlで一つ前の操作に戻る最も手軽で一般的な方法は、キーボードショートカットの[Ctrl] + [Z]
キーを同時に押すことです。このショートカットは、WordやExcel、iMovieなど、AviUtl以外の多くのソフトウェアでも共通して利用されており、パソコン作業における「魔法の呪文」とも言えるでしょう。連続して[Ctrl] + [Z]
を押すことで、複数の操作を遡って元に戻すことが可能です。
メニューからの操作:「編集」>「元に戻す」
ショートカットキーを覚えていなくても、AviUtlのメニューバーから「元に戻す」操作を行うことができます。メインウィンドウ上部の「編集」メニューをクリックし、ドロップダウンリストから「元に戻す」を選択してください。
操作を「やり直す(Redo)」方法:`patch.aul`が必須
「元に戻す」操作は非常に便利ですが、時には「やっぱり今の操作を取り消す前の状態に戻したい」と思うこともあるでしょう。このような場合に使うのが「やり直し(Redo)」機能です。
「patch.aul」プラグインの導入が必須
AviUtlの標準機能では、「やり直し(Redo)」機能は提供されていません。しかし、有志によって開発された高機能なプラグイン「patch.aul」を導入することで、このRedo機能が利用可能になります。
「patch.aul」は、単にRedo機能を追加するだけでなく、AviUtlに存在する様々なバグ(特にテキスト入力時やクリッピング設定時、カメラ制御時など、Undo/Redoデータが正常に作成されない不具合)を修正し、全体の安定性を飛躍的に向上させる非常に重要なプラグインです。
Ctrl + Y (または Ctrl + .) での操作
「patch.aul」を導入すると、[Ctrl] + [Y]
キー(または[Ctrl] + [.]
キー)の同時押しで、Undoで戻した操作を「やり直す」ことができます。これにより、UndoとRedoを組み合わせて、より柔軟な編集作業が可能になります。

AviUtlを快適に、そして安定して使うためには、「patch.aul」の導入はほぼ必須と言えるでしょう。多くのトラブルを未然に防ぎ、機能性も格段に向上します。
「元に戻す」機能の限界と注意点
「元に戻す」機能は非常に強力ですが、万能ではありません。その限界と注意点を理解しておくことで、予期せぬデータ消失を防ぐことができます。
ソフトウェアの終了やPCシャットダウンによる履歴のリセット
AviUtlを閉じてしまったり、パソコンの電源を落としてしまったりすると、「元に戻す」ための履歴はすべてリセットされます。そのため、一度ソフトウェアを終了してしまうと、それ以前の操作をUndoで戻すことはできなくなります。
プロジェクトファイルの保存による履歴のリセット
一部のソフトウェアでは、プロジェクトデータを保存した際に、それまでのUndo履歴がリセットされることがあります。しかし、AviUtlの拡張編集では、基本的に保存してもUndo履歴は維持されます。 予期せぬ挙動を防ぐためにも、重要な変更を加える前にはこまめな保存を心がけることが大切です。
Undo履歴の回数制限とメモリ依存
AviUtlのUndo履歴は、お使いのパソコンのメモリ(バッファ)容量に依存します。非常に多くの操作を連続して行ったり、重いエフェクトの適用など負荷の高い操作を一度にUndoしようとすると、メモリ不足によりフリーズの原因となることがあります。また、古いバージョンのAviUtl(例:0.90c以前)では、Undoが一度しかできないという制限もありました。
特定の操作でUndoが効かないケース(`patch.aul`未導入時)
前述の通り、標準のAviUtlでは、テキスト入力やクリッピング、カメラ制御などの特定の操作でUndoデータが正常に作成されないバグが存在します。 この場合、[Ctrl] + [Z]
を押しても期待通りに元に戻らないことがあります。この問題は「patch.aul」を導入することで解決されます。

Undo/Redo機能はあくまで補助的なものです。特に長時間の編集作業では、これらの機能に頼りすぎず、後述するデータ保護策を徹底することが、プロの動画クリエイターとしての基本です。
予期せぬ事態から編集データを守るための徹底対策
「元に戻す」機能の限界を補い、大切な編集データを守るためには、日頃からの予防策が不可欠です。ここでは、プロの動画クリエイターが実践するデータ保護の極意をご紹介します。
1. こまめな保存の習慣化(Ctrl + S)
最も基本的でありながら、最も重要な対策が「こまめな保存」です。AviUtlでの編集作業中は、数分おきに[Ctrl] + [S]
キーを押してプロジェクトを上書き保存する習慣をつけましょう。これにより、万が一のフリーズや強制終了時にも、最新の状態に近いデータを復元できる可能性が高まります。
- プロジェクトファイル(.aup): 編集内容全体を保存するファイルです。
- オブジェクトファイル(.exo): 特定のオブジェクトやシーンの設定を保存するファイルです。部分的なバックアップや使い回しに便利です。

2. AviUtlの自動バックアップ機能を活用する
AviUtlの拡張編集には、非常に便利な「自動バックアップ」機能が標準で搭載されています。この機能を有効にすることで、指定した間隔で自動的に編集内容が保存され、予期せぬトラブルからの復旧に役立ちます。
自動バックアップの設定方法
- AviUtlを起動し、拡張編集タイムライン上で右クリックします。
- 表示されるメニューから「環境設定」を選択します。
- 設定ウィンドウの中央付近にある「自動バックアップを有効」にチェックを入れます。
- 「バックアップの間隔」と「バックアップファイルの最大数」を設定します。
「バックアップの間隔」はデフォルトで5分ですが、バックアップファイルは容量が小さく、負荷もほとんどかからないため、1分程度に設定することをおすすめします。 「バックアップファイルの最大数」を1440に設定すれば、1分間隔で24時間分の履歴を保存できます。
バックアップファイルの保存場所と復元方法
自動バックアップファイルは、AviUtlがインストールされているフォルダ内の「backup」フォルダに保存されます。 ファイル名は日付と時刻で管理されており、拡張子は「.exedit_backup」ですが、実体は「.aup」ファイルと同じです。
復元する際は、AviUtlで何もプロジェクトを開いていない状態で、拡張編集ウィンドウを右クリックし、「バックアップファイルから新規作成」を選択します。 希望の時刻のファイルを選択することで、その時点の編集状態を復元できます。

自動バックアップは、フリーズや強制終了からの復旧に非常に有効な「保険」です。必ず設定を有効にしておきましょう。万が一のデータ消失からあなたを守ってくれます。

3. プロジェクトファイルの定期的な複製とバージョン管理
より確実なデータ保護のためには、プロジェクトファイル(.aup)を定期的に複製し、別名で保存する「バージョン管理」も有効です。例えば、「動画名_v1.aup」「動画名_v2.aup」のように、節目ごとにファイルを分けて保存することで、後から特定の時点の編集状態に戻ることが容易になります。
特に大規模なプロジェクトや、重要な変更を加える前には、必ず別名で保存する習慣をつけましょう。これにより、万が一最新のファイルが破損しても、一つ前の安定したバージョンから作業を再開できます。
4. 終了時の確認ダイアログ設定
うっかり保存し忘れてAviUtlを閉じてしまうミスを防ぐために、終了時の確認ダイアログを有効にしておきましょう。
- AviUtlのメインメニューから「ファイル」>「環境設定」を選択します。
- 「編集ファイルが閉じられるときに確認ダイアログを表示する」にチェックを入れます。
- 設定を保存し、AviUtlを再起動します。
これにより、保存されていない変更がある状態でAviUtlを閉じようとすると、確認メッセージが表示されるようになります。
5. フリーズ・クラッシュ対策と復旧のヒント
AviUtlは比較的軽量なソフトですが、複雑な編集やPCスペックによってはフリーズやクラッシュが発生することもあります。 以下の対策を講じることで、リスクを軽減し、万が一の際にも復旧しやすくなります。
- 「patch.aul」の導入: 前述の通り、多くのバグ修正と安定性向上に寄与します。
- 重いエフェクトやオブジェクトの管理: プレビュー時に重くなるエフェクトは、出力直前までチェックを外しておくなどの工夫をしましょう。
- パフォーマンス改善プラグインの検討: 「InputPipePlugin」のようなプラグインは、メモリ使用効率を改善し、動作を快適にする効果が期待できます。
- AviUtl本体の最新バージョン使用: 最新版(例:1.10)は、メモリ使用効率の改善など、パフォーマンス向上が図られている場合があります。
- フリーズ時の待機: 「応答なし」と表示されても、すぐに強制終了せず、数十秒から数分程度待つと復帰する場合があります。
- ディスク容量の確認: バックアップファイルや一時ファイルの保存に十分な空き容量があるか確認しましょう。
- プラグインの更新: 古いプラグインが原因で不安定になることもあるため、定期的に最新版に更新しましょう。
- データ復旧ソフトの検討: 自動バックアップや手動保存でも復旧できない場合、データ復旧ソフト(Recuva、EaseUS Data Recovery Wizardなど)の使用や専門業者への相談も最終手段として考慮できます。
これらの対策を組み合わせることで、より安全で快適なAviUtlでの動画編集環境を構築できます。

AviUtlの「履歴」に関するその他の機能
「元に戻す」機能とは異なりますが、AviUtlには「履歴」という言葉に関連する別の便利な機能があります。
「最近使ったファイル」機能
AviUtlのメインウィンドウの「ファイル」メニューには、「最近使ったファイル」という項目があります。ここには、最近開いたプロジェクトファイルの履歴が自動的に保存されており、素早くアクセスできます。 デフォルトでは8個の履歴が保存されますが、aviutl.ini
ファイルを編集することで、0~10の範囲で履歴の数を変更することが可能です。
この機能はUndo履歴とは異なり、あくまで「開いたファイルの履歴」です。誤ってファイルを削除してしまった場合などに、以前開いた場所を特定する手がかりになることがあります。
まとめ:安全で効率的なAviUtl編集のために
AviUtlでの動画編集において、「元に戻す」機能は操作ミスを修正するための強力なツールです。しかし、その限界を理解し、適切なデータ保護策を講じることが、何よりも重要です。
[Ctrl] + [Z]
で「元に戻す」操作をマスターし、patch.aul
を導入して「やり直し(Redo)」機能も活用しましょう。- こまめな保存、自動バックアップ機能の有効化、プロジェクトのバージョン管理を徹底し、大切な編集データを守りましょう。
- フリーズやクラッシュ対策として、プラグインの活用やPC環境の最適化にも目を向けましょう。
これらの知識と習慣を身につけることで、AviUtlでの動画編集がより安全で、効率的かつ快適なものになるはずです。安心してクリエイティブな作業に集中し、素晴らしい動画作品を生み出してください。
