Microsoft社がかつて提供していた「Windows ムービーメーカー」は、直感的な操作で手軽に動画編集ができるため、多くのユーザーに愛用されてきました。しかし、その手軽さとは裏腹に、編集中や保存時に様々なエラーに遭遇することも少なくありません。特に、せっかく時間をかけて作った動画が保存できない、読み込めないといったトラブルは、多くのユーザーを悩ませる原因となっています。
このページでは、ムービーメーカーで頻繁に発生するエラーの種類と、それぞれの具体的な対処法を詳しく解説します。また、ムービーメーカーが2017年に公式サポートを終了している現状も踏まえ、より安定した動画編集環境を求める方への代替ソフトの検討についても触れています。この記事を読めば、ムービーメーカーでのトラブルを解決し、スムーズな動画制作に役立つでしょう。
Windows ムービーメーカーの現状と利用上の注意点
Windows ムービーメーカーは、2017年1月10日をもってMicrosoftによる公式サポートと配布が終了しています。 このため、現在ではMicrosoftの公式サイトからダウンロードすることはできません。もし「ムービーメーカーをダウンロードできる」と謳う非公式サイトを見つけたとしても、それらはウイルスやマルウェアを仕込んでいる可能性が非常に高く、安易なダウンロードは避けるべきです。
公式サポートが終了しているため、最新のWindows OS(Windows 10や11など)では動作が不安定になったり、予期せぬエラーが発生しやすくなっています。 既にインストール済みの場合は引き続き使用できますが、セキュリティ更新プログラムの提供がないため、使用は推奨されていません。
ムービーメーカーでよくあるエラーの種類と原因
ムービーメーカーでの動画編集中に発生するエラーは多岐にわたりますが、その多くは特定のパターンに分類できます。エラーの原因を理解することで、適切な対処法を見つけやすくなります。
動画テンプレートなら編集も簡単
無料でも使えるのに、使わないのはもったいないかも。今すぐダウンロード。
1. ファイル参照エラー(「ファイルが不足しています」)
ムービーメーカーで最も頻繁に遭遇するエラーの一つが、「ファイル”〇〇”が不足しています。不足しているファイルを探すかアイテムをプロジェクトから削除します」というメッセージが表示されるファイル参照エラーです。
このエラーは、プロジェクトで使用している写真、動画、BGMなどの素材ファイルの「場所」や「名前」が、ムービーメーカーに読み込んだ後で変更された場合に発生します。ムービーメーカーは、プロジェクトファイル内に素材そのものを埋め込むのではなく、素材がパソコンのどこにあるかを示す「パス(参照先)」を参照して読み込んでいるため、パスが変わるとファイルを見失ってしまうのです。
- 利用していた写真や動画を別の場所に移動した(自分で整理した)
- 利用していた素材やフォルダの名前を変更した
- 素材ファイルを誤って削除してしまった
このような状況は、特に動画編集に不慣れな初心者の方に多く見られます。整理整頓のつもりでファイルを移動したり、名前を変更したりした結果、ムービーメーカーが素材を見つけられなくなるのです。
2. ムービー保存・書き出し時のエラー(フリーズ、0x87260103など)
動画の編集が終わり、いざムービーとして保存しようとした際に、ムービーメーカーがフリーズしたり、エラーメッセージが表示されて保存ができないという問題もよく発生します。
特に「ムービーメーカープロジェクトに不足しているファイルまたは使用できないファイルが含まれているためムービーを保存できません。「オプション」でファイルの準備が有効になっていることを確認するか,該当するファイルを削除してからもう一度やり直してください。エラー:0x87260103」といったエラーコードが表示されることがあります。
主な原因は以下の通りです。
- メモリ不足・PCスペック不足:長時間の動画や高画質の動画を編集・保存する際に、パソコンの物理メモリやCPUの処理能力が追いつかないことがあります。ムービーメーカーは32bitアプリケーションであるため、扱えるメモリ容量に限界があることも一因です。
- ファイル名に特殊文字が含まれる:保存しようとするファイル名に、ムービーメーカーが認識できない記号(例:円記号「\」「¥」など)が含まれていると、保存エラーが発生することがあります。
- プロジェクトファイルの破損:稀に、編集中のプロジェクトファイル自体が破損しているために保存できないケースもあります。
- 互換性のないビデオフィルターやコーデック:システムにインストールされているビデオフィルターやコーデックがムービーメーカーと競合し、動作停止や保存エラーを引き起こすことがあります。
3. 読み込みエラー(MP4など特定のファイルが読み込めない)
せっかく用意した動画や写真素材が、ムービーメーカーに読み込めないというトラブルもよく聞かれます。特にMP4ファイルは広く使われている形式ですが、ムービーメーカーのバージョンやコーデックによっては読み込めないことがあります。
- 非対応のファイル形式やコーデック:ムービーメーカーがサポートしていない動画や音声の形式、または特殊なコーデックでエンコードされたファイルは読み込めません。
- ファイルの破損:ダウンロード中や転送中にファイルが破損してしまい、読み込めなくなることがあります。
- 古いバージョンのムービーメーカー:特にMP4出力に対応していない古いバージョンのムービーメーカーを使用している場合、MP4ファイルの読み込みや保存に問題が生じることがあります。

4. 起動しない・動作が重い・強制終了する
ムービーメーカーが起動しない、編集中に頻繁にフリーズする、または強制終了してしまうといった動作不良も、ユーザーを悩ませる一般的な問題です。
- システム要件の不足:パソコンのOSやハードウェアがムービーメーカーの最小システム要件を満たしていない場合、正常に動作しないことがあります。
- ビデオドライバーの不具合・未更新:グラフィックドライバーが古い、または破損していると、ムービーメーカーの表示や処理に問題が生じ、フリーズやクラッシュの原因となります。
- CPUの干渉:特にマルチコアCPUを搭載したPCの場合、ムービーメーカーが複数コアの並列処理と干渉し、フリーズやエラーを引き起こすことがあります。
- バックグラウンドプロセスの影響:他のアプリケーションが大量のメモリやCPUリソースを消費していると、ムービーメーカーの動作が重くなることがあります。
【エラー別】具体的な対処法
それぞれのエラーには、効果的な対処法が存在します。落ち着いて一つずつ試してみましょう。
1. ファイル参照エラー時の対処法
「ファイルが不足しています」と表示された場合、ムービーメーカーにファイルの正しい場所を教えてあげる必要があります。
- ファイルの再リンク:エラー表示されている素材をクリックすると表示される「検索」ボタンをクリックし、プロジェクトで利用していた素材を探して指定します。名前やフォルダ名が変更されたり場所が変わったことによってムービーメーカーがファイルの場所を参照できなくなっている状態なので、ファイルの正しい場所をもう一度全て教えてあげる必要があります。
- プロジェクト管理の徹底:ムービーメーカーに限らず、動画編集ソフトでは、編集に利用する写真や動画、BGMファイルなどの素材を、プロジェクトの最初から最後まで同じフォルダに同じファイル名で保存しておくことが基本です。編集を開始する前に、すべての素材を一つの専用フォルダにまとめ、そのフォルダやファイルの名前、場所を一切変更しないように徹底しましょう。

動画編集では、素材ファイルを移動・削除しないのが鉄則です。プロジェクト開始前に素材を整理し、専用フォルダで一元管理しましょう。
2. ムービー保存・書き出し時のエラーの対処法
保存時のエラーは、PCのスペックやプロジェクトの規模に起因することが多いため、以下の対策を試してみてください。
- プロジェクトを分割して出力する:長編の動画をムービーメーカーで作成している場合、プロジェクト自体が重くなり、メモリ不足を引き起こしやすくなります。10〜15分程度の複数の編集プロジェクトに分割し、それぞれを個別に保存・出力することで、負荷を軽減できます。
- パソコンのメモリを増設する:物理的なメモリ(RAM)が1〜2GB程度しかない旧式のパソコンの場合、メモリ不足が頻繁に発生します。可能であれば、メモリを増設(最低4GB以上推奨)することで、大幅に改善される可能性があります。ただし、ムービーメーカーは32bitアプリケーションであるため、増設しても利用できるメモリには上限がある点に注意が必要です。
- 不要なアプリケーションを閉じる:ムービーメーカーの保存中は、他のアプリケーションをすべて閉じ、PCのメモリやCPUリソースをムービーメーカーに集中させましょう。
- ファイル名を確認する:保存しようとするムービーのファイル名に、半角英数字以外の特殊な記号や全角文字、半角カナが含まれていないか確認し、もしあれば半角英数字のみに変更してみてください。
- パソコンやムービーメーカーを再起動する:一時的な不具合であれば、単純にムービーメーカーやパソコンを一度閉じて再起動するだけでも、問題が解決することがあります。
- 出力設定を見直す:高解像度での出力が難しい場合は、解像度を下げて保存を試みるのも有効です。

長尺動画の編集では、こまめな保存と、途中で一度プロジェクトを分割してテスト出力を行うのがおすすめです。エラー発生時のダメージを最小限に抑えられます。
3. 読み込みエラー時の対処法
特定のファイルが読み込めない場合は、以下の方法を試してみてください。
- ファイル形式を変換する:ムービーメーカーがサポートしていない形式の動画や音声ファイルは、専用の変換ソフト(動画変換ソフトなど)を使って、ムービーメーカーが対応している形式(例:WMV、MP4、AVI、MP3、WAV、JPEG、PNGなど)に変換してから読み込み直しましょう。
- コーデックを確認・更新する:動画ファイルは同じMP4形式でも、内部のエンコード方式(コーデック)が異なる場合があります。必要なコーデックがPCにインストールされていない、または古い場合に読み込みエラーが発生することがあります。最新のコーデックパックをインストールするか、動画変換ソフトで一般的なコーデックに変換してから試してみてください。
ムービーメーカーで読み込める主なファイル形式は以下の通りです。
カテゴリ | 対応ファイル形式(例) |
---|---|
動画 | WMV, MP4 (2012年バージョン以降), AVI, MPG, MPEG, ASF, MOV (一部) |
画像 | JPEG, PNG, BMP, GIF, TIFF |
音声 | MP3, WAV, WMA, ASF |
4. 起動しない・動作が重い・強制終了する際の対処法
ムービーメーカー自体の動作が不安定な場合は、以下の対策が有効です。
- システム要件の確認とドライバの更新:まず、お使いのPCがムービーメーカーの最小システム要件を満たしているか確認し、特にビデオドライバーが最新の状態になっているかチェックしましょう。古いドライバーは動作不良の大きな原因となります。
- CPUのシングルコア設定(上級者向け):一部のユーザーからは、マルチコアCPUの干渉によるフリーズを回避するため、ムービーメーカーのプロセスをシングルコアで動作させることで改善したという報告があります。これはタスクマネージャーから設定できますが、ムービーメーカーを起動するたびに設定し直す必要があるため、少々手間がかかります。
- Ctrl + Alt + Deleteでタスクマネージャーを起動。
- 「プロセス」タブから「moviemk.exe」を探し右クリック。
- 「関係の設定(A)」を選択し、「CPU 0」以外のチェックを外して「OK」。
- 互換性のないビデオフィルターの削除:「ムービーメーカーは動作を停止しました」というエラーが出る場合、互換性のないビデオフィルターが原因の可能性があります。セーフモードでムービーメーカーを起動し、問題のあるフィルターを特定して削除することで解決する場合があります。
- PCの最適化:バックグラウンドで動作している不要なアプリケーションを終了させたり、ディスククリーンアップを行って空き容量を増やしたりすることで、PC全体の動作が軽くなり、ムービーメーカーのパフォーマンスも向上します。

PCの動作が重いと感じたら、まずは再起動と不要なアプリの終了を試しましょう。それでも改善しない場合は、ドライバーの更新やディスクの整理も効果的です。
それでも解決しない場合:現代の動画編集ソフトへの移行を検討
ムービーメーカーは非常に便利なソフトでしたが、2017年1月に公式サポートが終了しており、最新のOSやハードウェア環境では動作が不安定になることがあります。 上記の対処法を試しても問題が解決しない場合や、より高度な編集機能、安定した動作を求める場合は、他の動画編集ソフトへの移行を検討することをおすすめします。
現在では、ムービーメーカーと同じくらい直感的に操作できる無料ソフトから、プロレベルの編集が可能な有料ソフトまで、様々な選択肢があります。特に、Windows 10/11には標準で「フォト」アプリに簡易的な動画編集機能が搭載されており、ムービーメーカーに近い感覚で利用できます。 また、Windows 10/11の一部エディションには「Clipchamp」が標準搭載されており、こちらも手軽に利用できる代替ソフトとして注目されています。
以下に、ムービーメーカーの代替として検討できる主な動画編集ソフトをいくつかご紹介します。
- PowerDirector:直感的な操作性と豊富な機能を兼ね備え、初心者から上級者まで幅広く利用されています。国内シェアも高く、ムービーメーカーからの移行もスムーズです。
- OpenShot / Shotcut:無料で利用でき、基本的な動画編集機能が充実しています。Windows、Mac、Linuxに対応しており、ユーザーフレンドリーなインターフェースが特徴です。
- VideoProc Converter:ムービーメーカーと同様の編集機能に加え、より多くのフォーマットに対応し、動作も軽快です。
- iMovie (Macユーザー向け):Macに標準搭載されており、シンプルながらも高機能な編集が可能です。 [Original]
- DaVinci Resolve:プロレベルのカラーグレーディングやVFX機能を持つ無料ソフトですが、高スペックなPCを推奨します。
- Adobe Premiere Rush:PCとスマホの両方で連携して編集できるため、外出先での編集にも便利です。
- VLLO / CapCut (スマホ向け):スマートフォンで手軽に動画編集をしたい場合に非常に人気の高いアプリです。 [Original]




まとめ
ムービーメーカーは、手軽に動画編集を始められる優れたツールでしたが、その特性上、ファイル参照エラーや保存時のフリーズ、動作の重さといった問題に遭遇しやすいのも事実です。これらのエラーの多くは、素材ファイルの管理方法、PCのスペック、またはソフトウェアの特性に起因しています。
本記事で紹介した対処法を試すことで、多くの問題は解決できるはずです。特に、素材ファイルを一元管理すること、PCのメモリや空き容量を確保すること、そして定期的な再起動は、ムービーメーカーを安定して利用するための基本的な対策となります。
しかし、ムービーメーカーがすでに公式サポートを終了していることを考えると、今後も安定した動画編集を続けていきたいのであれば、より現代的な代替ソフトへの移行も視野に入れることを強くおすすめします。現在の動画編集ソフトは、ムービーメーカーの使いやすさを引き継ぎつつ、さらに多くの機能と安定性を提供しています。ご自身のPC環境や編集したい動画のレベルに合わせて、最適なソフトを選び、快適な動画制作を楽しんでください。
||<