iMovieは、Appleデバイスに標準搭載されている高機能な動画編集ソフトウェアです。動画編集において、特定の瞬間を際立たせたり、感情を強調したりするために「スローモーション」は非常に効果的な演出手法となります。例えば、スポーツの決定的瞬間、水しぶきが上がる一瞬、人物の繊細な表情など、肉眼では捉えきれない細部を鮮明に映し出すことで、視聴者に強い印象を与えることができます。
本記事では、iMovieを使って動画をスローモーションにするための具体的な手順を、Mac版とiPhone/iPad版に分けて詳しく解説します。さらに、音声のピッチ調整や、クリップの一部にのみスローモーションを適用する応用テクニック、そしてスローモーションを効果的に活用するシーンについてもご紹介します。iMovieの機能を最大限に引き出し、あなたの動画をより魅力的なものにするためのヒントが満載です。
iMovieでスローモーションを適用する基本手順(Mac版)
Mac版iMovieで動画にスローモーションを適用する手順は非常にシンプルです。ここでは、基本的な操作方法を順を追って解説します。
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1. スローモーションを適用したいクリップを選択する
まず、iMovieのタイムラインに配置されている動画クリップの中から、スローモーションにしたいクリップを一つ選択します。選択すると、クリップの周囲に黄色の枠が表示されます。
2. 速度コントロールメニューを開く
クリップを選択した状態で、iMovieの上部メニューバーにある「変更」をクリックし、ドロップダウンメニューから「スローモーション」を選択します。または、プレビューパネルの上部に表示される「速度」ボタン(スピードメーターのアイコン)をクリックすることでも、速度コントロールメニューを開くことができます。
3. スローモーションの速度を選択・調整する
速度コントロールメニューを開くと、「遅く」の項目に「50%」「25%」「10%」といったプリセットの速度オプションが表示されます。
カスタム速度での微調整
より細かく速度を調整したい場合は、速度コントロールメニューで「カスタム」を選択し、表示されるボックスに任意のパーセンテージを入力します。例えば、「50%」と入力すれば半分の速度に、「25%」で4分の1の速度になります。
この方法を使えば、BGMの長さに合わせるなど、微妙な速度調整も可能です。
速度エディタで直感的に調整
より視覚的に速度を調整したい場合は、クリップを右クリック(またはControlキーを押しながらクリック)し、「速度エディタを表示」を選択します。タイムライン上のクリップに調整バーが表示され、これをドラッグして左右に動かすことで、直感的に速度を変更できます。
速度調整を行うと、タイムライン上のクリップに「カメ」のアイコンが表示されます。これはスローモーションが適用されていることを示しており、視覚的に現在の速度状態を把握するのに役立ちます。

Mac版iMovieでは、速度コントロールメニューと速度エディタの両方を使いこなすことで、より柔軟な速度調整が可能です。特にBGMとの同期など、タイミングが重要な場面では速度エディタが役立ちます。
iMovieでスローモーションを適用する基本手順(iPhone/iPad版)
iPhoneやiPadのiMovieアプリでも、Mac版と同様に手軽にスローモーションを適用できます。外出先での編集や、手軽に動画の雰囲気を変えたい場合に便利です。
1. プロジェクトを開き、クリップを選択する
iMovieアプリを起動し、編集したいムービープロジェクトを開きます。タイムラインに表示されている動画クリップの中から、スローモーションにしたいクリップをタップして選択します。
2. 速度ボタンをタップする
クリップを選択すると、画面下部にインスペクタ(ツールバー)が表示されます。その中にある「速度」ボタン(スピードメーターのアイコン)をタップします。
3. スライダーで速度を調整する
速度ボタンをタップすると、クリップの下部に両端にハンドルが付いた黄色のバーが表示されます。このスライダーを左にドラッグすると、動画がスローモーションになります。右にドラッグすると早送りになります。
iPhone/iPad版iMovieでは、スライダーを動かすだけで直感的に速度を調整できます。最大で1/8倍速のスローモーションを適用可能です。

iPhoneやiPadでの編集は、直感的なタッチ操作が魅力です。スライダーを微調整して、理想のスローモーションを見つけてみましょう。
スローモーション時の音声調整:ピッチを保持する
動画をスローモーションにすると、通常、音声のピッチ(音の高さ)も一緒に低く、太い音に変化してしまいます。しかし、iMovieにはこの音声の変化を抑え、自然な音声を保つための便利な機能があります。
1. 音声ピッチ変化のメカニズム
動画の再生速度を変更すると、それに伴い音声の再生速度も変わります。音声の波形が引き伸ばされる(スローモーションの場合)ことで、音の周波数が下がり、結果としてピッチが低く聞こえる現象が発生します。
2. 「ピッチを保持」機能の活用
iMovieでは、この音声ピッチの変化を抑える「ピッチを保持」機能が用意されています。この機能を使うことで、スローモーションにしても音声の高さが不自然に変わることなく、元の音程を維持できます。
Mac版での操作
速度コントロールを適用したクリップに表示される「速度」ボタン(カメのアイコン)をクリックし、表示されるメニューの中から「ピッチを保持」の項目にチェックを入れます。
iPhone/iPad版での操作
iPhone/iPad版iMovieでも、速度調整のスライダーを操作する際に表示されるオプションから「ピッチを速度に合わせる」の設定をオフにすることで、音の高さが変わらず維持されます。
3. あえてピッチを変化させる表現の面白さ
「ピッチを保持」機能は便利ですが、あえてピッチを変化させた方が、スローモーションの「らしさ」が出て、よりドラマチックな演出になる場合もあります。例えば、ホラー映画のような不気味な雰囲気を出したい時や、コミカルな表現をしたい時など、演出意図に合わせて使い分けるのがプロの技です。

音声のピッチ調整は、動画の雰囲気を大きく左右する要素です。スローモーションの映像と音声をどのように組み合わせるか、様々なパターンを試して最適な表現を見つけましょう。
iMovieスローモーションの応用テクニック
iMovieのスローモーション機能は、単に動画全体を遅くするだけでなく、より高度な編集にも活用できます。ここでは、動画の表現力を高める応用テクニックをご紹介します。
1. クリップの一部だけをスローモーションにする方法
動画全体ではなく、特定の瞬間だけをスローモーションにすることで、より効果的な演出が可能です。このテクニックは、スポーツのハイライトシーンや、感情が爆発するようなドラマチックな瞬間に特に有効です。
クリップの分割
スローモーションにしたい部分の開始点と終了点でクリップを分割します。分割したい箇所で再生ヘッドを合わせ、クリップを右クリック(またはControlキーを押しながらクリック)して「クリップを分割」を選択します。iPhone/iPad版では、クリップをタップしてハサミのアイコンをタップし、「分割」を選択します。
分割されたクリップのうち、スローモーションにしたい部分だけを選択し、前述の速度調整手順でスローモーションを適用します。
範囲選択(Mac版)
Mac版iMovieでは、「R」キーを押しながらドラッグすることで、クリップの一部を範囲選択し、その部分にのみ速度調整を適用することも可能です。これにより、クリップを分割する手間を省き、よりスムーズに部分的なスローモーションを作成できます。
2. スローモーションと通常速度の組み合わせ
動画の中で、通常速度のシーンとスローモーションのシーンを交互に配置することで、映像に緩急が生まれ、視聴者の注意を引きつけやすくなります。例えば、アクションシーンで通常速度で展開し、決定的な一撃の瞬間だけをスローモーションにするなど、ドラマチックな演出が可能です。
3. フリーズフレームとの組み合わせ
iMovieには、特定のフレームを静止画として挿入する「フリーズフレーム」機能もあります。スローモーションでゆっくりと展開する映像の最後にフリーズフレームを挿入することで、その瞬間をより印象的に見せることができます。

4. インスタントリプレイ機能との連携
iMovieの「インスタントリプレイ」機能は、特定のシーンを自動的にスローモーションで繰り返すことで、決定的瞬間を強調するのに役立ちます。スローモーションと組み合わせることで、より印象的なリプレイ映像を作成できます。


これらの応用テクニックを駆使することで、単調になりがちな動画にリズムと奥行きを与えることができます。様々な組み合わせを試して、あなたのクリエイティブなアイデアを形にしましょう。
スローモーションを効果的に活用するシーンとクリエイティブなアイデア
スローモーションは、単なる速度調整機能にとどまらず、動画のメッセージ性や感情表現を豊かにする強力なツールです。ここでは、スローモーションが特に効果を発揮する具体的なシーンをご紹介します。
スポーツのハイライト
サッカーのゴールシーン、バスケットボールのシュート、陸上競技のフィニッシュなど、一瞬で終わってしまうスポーツの決定的瞬間をスローモーションで再生することで、選手の動きや表情、ボールの軌道などを詳細に捉え、感動や興奮をより深く伝えることができます。
ドラマチックな瞬間・感情表現
水しぶきが上がる瞬間、物が砕け散る様子、感情がこみ上げる人物の表情など、肉眼では見逃しがちな細部をスローモーションで映し出すことで、映像にインパクトと深みを与え、視聴者の心に強く訴えかけることができます。映画「マトリックス」のバレットタイムのように、スローモーションは映像表現の可能性を広げます。
自然現象や科学的な観察
雨粒が落ちる瞬間、花が開く様子、化学反応の微細な変化など、普段見過ごしてしまうような自然現象や科学的な動きをスローモーションで捉えることで、新たな発見や驚きを視聴者に提供できます。教育コンテンツやドキュメンタリーにも有効です。
コメディやアート表現
意図的にコミカルな動きをスローモーションにしたり、抽象的なアート作品の動きをゆっくり見せたりすることで、独特のユーモアや美しさを表現できます。クリエイティブな発想で、スローモーションの新たな可能性を探ってみましょう。

スローモーションは、単に「遅くする」だけでなく、「見せる」ための演出です。何を強調したいのか、どんな感情を伝えたいのかを明確にすることで、より効果的なスローモーションが生まれます。
スローモーション動画をより魅力的にする追加ヒント
iMovieのスローモーション機能を最大限に活用し、さらにプロフェッショナルな動画を作成するためのヒントをご紹介します。
高フレームレート(HFR)撮影の重要性とその効果
スローモーションを滑らかに再生するためには、元の動画が高フレームレート(HFR)で撮影されていることが非常に重要です。一般的な動画は30fps(フレーム/秒)ですが、iPhoneなどでは120fpsや240fpsでのスローモーション撮影が可能です。
高フレームレートで撮影された動画は、1秒あたりの情報量が多いため、スローモーションにしてもコマ落ちが少なく、非常に滑らかな映像になります。低フレームレートの動画を無理にスローモーションにすると、カクつきが生じやすいため注意が必要です。
BGMや効果音との組み合わせ
スローモーションの映像に合わせたBGMや効果音を選ぶことで、動画の雰囲気を一層高めることができます。例えば、ドラマチックなシーンには壮大なBGMを、コミカルなシーンには軽快な効果音を組み合わせるなど、音響効果を工夫することで、視聴者の感情に強く訴えかける動画になります。
カラーグレーディングやエフェクトの活用
スローモーションのシーンに、特定のカラーグレーディング(色調補正)やエフェクト(フィルターなど)を適用することで、映像の印象を大きく変えることができます。例えば、モノクロにすることでレトロな雰囲気を演出したり、特定の色彩を強調することで感情を表現したりするなど、視覚的な効果を追求してみましょう。
よくある質問とトラブルシューティング
iMovieでスローモーションを適用する際によくある疑問や問題点について解説します。
Q1: スローモーションがカクつく、滑らかでない
A: 主な原因は、元の動画のフレームレートが低いことです。例えば、30fpsで撮影された動画を極端にスローモーションにすると、コマ数が足りずにカクつきが生じやすくなります。滑らかなスローモーションを実現するには、iPhoneの「スローモーション」モードや、高フレームレート(120fps、240fpsなど)で撮影された動画を使用することをおすすめします。
Q2: 音声が途切れる、ノイズが入る
A: スローモーションによって音声の再生速度が極端に遅くなると、音声が不自然になったり、ノイズが入ったりすることがあります。iMovieの「ピッチを保持」機能を使用することで、ある程度の改善が見込めます。それでも問題が解決しない場合は、スローモーション部分の音声をミュートし、別途BGMや効果音を挿入することも検討しましょう。
Q3: スローモーションが適用できないクリップがある
A: iMovieのスローモーション機能は、動画クリップにのみ適用可能です。写真やテキスト、または一部のエフェクトが適用されたクリップには、速度調整機能が利用できない場合があります。 適用したいクリップが動画であることを確認してください。
まとめ
iMovieのスローモーション機能は、初心者から経験者まで、誰もが手軽にプロのような動画演出を可能にする強力なツールです。基本的な操作をマスターするだけでなく、クリップの一部に適用する応用テクニックや、高フレームレート撮影の重要性を理解することで、あなたの動画は飛躍的に魅力的になります。
スポーツのハイライト、感動的な瞬間、あるいはユニークなアート表現まで、スローモーションは動画のメッセージを深く、そして印象的に伝えるための鍵となります。ぜひ本記事で紹介したヒントを参考に、iMovieの機能を最大限に引き出し、あなたのクリエイティブなアイデアを形にしてみてください。動画編集の楽しさを存分に味わい、視聴者の心に残る素晴らしい作品を生み出しましょう。