動画編集ソフト「AviUtl」は、その多機能性と無料であることから多くのクリエイターに愛用されています。動画の品質や表現を大きく左右する要素の一つに「フレームレート」があります。フレームレートを適切に調整することで、動画をより滑らかにしたり、意図的にカクカクとした動きを演出したり、さらにはファイルサイズを最適化したりすることが可能です。
この記事では、AviUtlを使って動画のフレームレートを変更する基本的な方法から、より高度なテクニック、そして知っておくべき重要な注意点まで、プロの視点から徹底的に解説します。あなたの動画表現の幅を広げ、視聴者を惹きつける映像制作に役立ててください。
フレームレート(fps)とは?動画の「滑らかさ」の秘密
動画は、私たちが普段見ている「パラパラ漫画」と同じ原理でできています。たくさんの静止画(フレーム)が連続して表示されることで、あたかも動いているかのように見えるのです。この1秒間に表示されるフレームの数を表すのが「フレームレート」で、単位は「fps(frames per second)」です。
例えば、30fpsの動画は1秒間に30枚の静止画が切り替わっていることを意味します。この数値が高いほど、動画の動きはより滑らかで自然に見えます。逆に数値が低いと、動きがカクカクして見えるようになります。
一般的なフレームレートの目安
- 24fps:映画の標準的なフレームレート。独特のフィルムライクな質感があり、映画作品のような雰囲気を表現したい場合に選択されます。
- 29.97fps(約30fps):日本のテレビ放送や一般的なWeb動画で広く使われる標準的なフレームレートです。ファイルサイズと滑らかさのバランスが取れています。
- 59.94fps(約60fps):動きの速いスポーツ映像、ゲーム実況、アクションシーンなどでよく用いられ、非常に滑らかな動きが特徴です。臨場感や没入感を高めたい場合に最適です。
フレームレートは動画の滑らかさに直結しますが、同時にファイルサイズにも影響します。フレームレートが高いほど、データ量が増え、ファイルサイズも大きくなる傾向があります。そのため、動画の用途や配信プラットフォームの推奨設定に合わせて、最適なフレームレートを選ぶことが重要です。

フレームレートは動画の「表情」を決める重要な要素です。目的に合わせて最適なfpsを選ぶことが、視聴体験を向上させる鍵となります。
AviUtlでフレームレートを変更する基本的な方法
AviUtlには、動画のフレームレートを変更するためのいくつかの機能が備わっています。ここでは、主な変更方法をステップバイステップで解説します。
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方法1: 「設定」メニューからの変更(主にフレームレートを落とす場合)
この方法は、主に動画のフレームレートを下げたい場合に利用します。例えば、30fpsの動画を映画のような24fpsにしたり、意図的にカクカクしたコマ撮り風の動きにしたい場合に有効です。この方法では、既存のフレームを間引くことでフレームレートを下げます。
手順
- AviUtlに動画ファイルを読み込みます。
- メニューバーの「設定」から「フレームレートの変更」を選択します。,
- 表示されるリストから、希望のフレームレートを選択します。,
選択肢の表記について
リストの表記は「24fps <- 30fps (4/5)」のように、変更後のfpsと元のfps、そして比率が示されています。これは、元の動画が30fpsの場合、24fpsに変換されることを意味します。この方法では、単純にフレームを間引くことでフレームレートを下げます。
選択肢 | 元のfpsが30fpsの場合 | 元のfpsが60fpsの場合 | 備考 |
---|---|---|---|
24fps <- 30fps (4/5) | 24fps | 48fps | 映画のような質感に |
20fps <- 30fps (2/3) | 20fps | 40fps | |
15fps <- 30fps (1/2) | 15fps | 30fps | コマ撮り風の演出に |
12fps <- 30fps (2/5) | 12fps | 24fps | |
10fps <- 30fps (1/3) | 10fps | 20fps | よりカクカクした動きに |

テレビ番組の録画など、インターレース方式で記録された動画を24fpsに変更する場合は、[kk1 関連記事 blue 9818]も併せて行うとより自然な映像になります。
方法2: 新規プロジェクト作成時の設定
AviUtlで新しいプロジェクトを作成する際に、そのプロジェクトのフレームレートを設定することができます。これは、これから編集する動画全体のフレームレートを決定する上で非常に重要です。
手順
- AviUtlを起動し、メニューバーの「ファイル」から「新規プロジェクトの作成」を選択します。
- 表示されるダイアログで、希望の「フレームレート」を入力します。
- 「読み込むファイルにあわせる」のチェックを外すことで、指定したフレームレートでプロジェクトが作成されます。
この方法で設定したフレームレートは、プロジェクト全体の基準となります。後から変更することも可能ですが、手間がかかる場合があるため、最初に適切な設定を行うことが推奨されます。
方法3: 「再生速度の情報を変更」による調整
この機能は、動画の再生速度を変更する際に使われることが多いですが、フレームレートを直接指定して変更することも可能です。,,
手順
- AviUtlに動画ファイルを読み込みます。
- メニューバーの「編集」から「再生速度の情報を変更」を選択します。,,
- 「フレームレート」の項目に、希望の数値を直接入力します。,,
- 「OK」をクリックして設定を適用し、動画を出力します。
注意点:再生速度への影響
この方法でフレームレートを変更すると、元のフレーム数を維持したまま再生速度が変わる場合があります。例えば、30fpsの動画を60fpsに変更すると、フレーム数は同じでも再生時間が半分になることがあります。 意図しない再生速度の変化を防ぐためには、後述するフレーム補間などの方法を検討しましょう。

この方法は、動画の再生時間を意図的に変えたい場合に有効です。例えば、スローモーションにしたい場合はフレームレートを下げ、早送りにしたい場合はフレームレートを上げるといった使い方ができます。
より高度なフレームレート変更・補間テクニック
単純なフレームの間引きや複製だけでなく、より滑らかな高フレームレート動画を作成したい場合は、「フレーム補間」という技術が役立ちます。
フレーム補間(フレーム水増し・フレーム生成)とは?
フレーム補間とは、元の動画のフレームとフレームの間に、新しいフレームを生成して挿入することで、動画のフレームレートを向上させる技術です。これにより、動きがより滑らかになり、特にスローモーション映像などで効果を発揮します。,
- フレーム水増し:既存のフレームを単純にコピーして挿入する方法です。手軽ですが、画質の向上は限定的です。AviUtlの「再生速度の情報を変更」でフレームレートを高く設定すると、この方法でフレームが水増しされます。,
- フレーム生成:元のフレーム間の動きを解析し、AI技術などを用いて新しいフレームを生成する方法です。より自然で滑らかな映像が得られますが、処理に時間がかかり、専用のプラグインやソフトウェアが必要になる場合があります。
フレーム補間のメリット・デメリット
- メリット:動画の動きが非常に滑らかになり、特に動きの速いシーンやスローモーションで効果を発揮します。高画質化にも寄与します。,
- デメリット:処理に時間がかかり、PCのスペックを要求される場合があります。また、不自然な動きやアーティファクト(ノイズ)が発生する可能性もゼロではありません。
AviSynthを活用した高品質フレーム補間
AviUtl単体では高度なフレーム生成による補間は難しいですが、「AviSynth」という外部ソフトと連携することで、より高品質なフレーム補間が可能になります。AviSynthはスクリプトで動作する動画編集ソフトで、MVToolsなどのプラグインと組み合わせることで、動画のフレーム間に補間フレームを生成し、擬似的に高フレームレート化できます。,
AviSynth活用のメリット・デメリット
- メリット:非常に高品質なフレーム補間が可能で、動画をより滑らかにできます。
- デメリット:導入や設定が複雑で、Avisynthスクリプトの知識が必要になります。初心者にはハードルが高いかもしれません。,
基本的な導入と使用の流れ
- AviSynthをダウンロードし、インストールします。,
- MVToolsなどのフレーム補間用プラグインを導入します。
- メモ帳などでAvisynthスクリプト(.avsファイル)を作成し、フレーム補間の処理を記述します。,
- 作成した.avsファイルをAviUtlにドラッグ&ドロップして読み込みます。AviUtlがAviSynthを介して動画を処理し、フレーム補間された状態で編集できるようになります。,

AviSynthは強力ですが、設定の複雑さから挫折する方も少なくありません。最近ではAIを活用したフレーム補間ソフトも登場しており、より手軽に高品質な補間が可能です。用途に応じて検討してみるのも良いでしょう。
AviUtlでフレームレート変更を行う際の注意点とトラブルシューティング
フレームレートの変更は動画の品質に大きな影響を与えるため、いくつかの注意点があります。
VFR(可変フレームレート)とCFR(固定フレームレート)
動画には、フレームレートが常に一定の「CFR(Constant Frame Rate)」と、シーンによってフレームレートが変動する「VFR(Variable Frame Rate)」があります。
AviUtlとVFR動画の相性
AviUtlは基本的にCFR動画の編集に最適化されています。そのため、VFRで撮影された動画をAviUtlに直接読み込むと、映像と音声がずれる「音ズレ」が発生する可能性が高くなります。,
解決策
- CFRへの変換:AviUtlで編集する前に、HandBrakeなどの外部ツールを使ってVFR動画をCFRに変換することを強く推奨します。,,
- 入力プラグインの設定:L-SMASH Worksなどの入力プラグインを使用している場合、その設定でVFRをCFRとして読み込むように調整できることがあります。,
ワンポイントアドバイス:VFR/CFRの確認方法
動画ファイルがVFRかCFRかを確認するには、「MediaInfo」などのコーデックチェッカーソフトが便利です。動画のプロパティからフレームレートの情報を確認できます。
「最大フレーム数」の設定
AviUtlには、プロジェクトで扱える動画の最大フレーム数が設定されています。デフォルトでは320,000フレーム(30fpsで約3時間)となっており、これを超える長さの動画を編集しようとすると、エラーが発生したり、途中で編集できなくなったりします。,,,
設定変更方法
- メニューバーの「ファイル」から「環境設定」→「システムの設定」を選択します。,
- 「最大フレーム数」の項目で、編集したい動画の長さに合わせて数値を変更します。例えば、10時間程度の動画を編集したい場合は、1,080,000フレーム程度に設定します。
最大フレーム数と動画時間の目安
最大フレーム数 | 30fpsの場合の目安時間 | 60fpsの場合の目安時間 |
---|---|---|
320,000 | 約3時間 | 約1時間30分 |
1,080,000 | 約10時間 | 約5時間 |
2,160,000 | 約20時間 | 約10時間 |

最大フレーム数を大きくすると、AviUtlが使用するメモリ量も増加します。PCのスペックが低い場合、過度に大きな値を設定すると動作が不安定になる可能性があるため、ご自身のPC環境に合わせて調整しましょう。,
設定変更後のAviUtl再起動の必要性
AviUtlの「システムの設定」など、一部の設定項目を変更した後は、変更内容を適用するためにAviUtlを再起動する必要があります。再起動しないと、設定が反映されず、意図した通りに動作しないことがあります。
エンコード時の最終確認
フレームレートを変更した後、最終的に動画を出力(エンコード)する際にも注意が必要です。出力設定のフレームレートが、編集中のプロジェクトのフレームレートと一致しているか確認しましょう。また、YouTubeなどの動画共有サイトにアップロードする場合は、各プラットフォームが推奨するフレームレート(例: 30fpsまたは60fps)に合わせることで、最適な画質で公開できます。
【プロが教える】フレームレート選びのコツと活用事例
フレームレートは単なる技術的な数値ではなく、動画の表現力を高めるクリエイティブな要素です。目的に応じたフレームレートの選び方と活用事例をご紹介します。
目的別フレームレートの選び方
- 滑らかさ重視(60fps):ゲーム実況、スポーツ、アクションシーンなど、動きの速い映像で臨場感や没入感を高めたい場合に最適です。
- ファイルサイズ重視(低fps):Webサイトでの埋め込み動画や、データ容量を抑えたい場合に、20fpsや15fpsなど低めのフレームレートを選択することで、ファイルサイズを削減できます。
- 特殊効果・演出(低fps):あえてフレームレートを低くすることで、コマ撮りアニメーションのようなカクカクした動きや、レトロな雰囲気を演出できます。
- 映画のような質感(24fps):映画作品のような独特の雰囲気を表現したい場合は、24fpsを選択します。

フレームレートは、動画の「呼吸」のようなものです。速い呼吸で躍動感を、ゆっくりとした呼吸で落ち着きを表現できます。視聴者に何を伝えたいか、どんな感情を抱かせたいかを考えて選びましょう。
活用事例
- ゲーム実況動画:動きの激しいゲームでは60fpsで録画・編集することで、視聴者に快適なプレイ体験を提供できます。
- Vlog・日常動画:一般的なWeb動画として30fpsがバランスが良く、ファイルサイズと滑らかさのバランスが取れています。
- タイムラプス動画:数秒に1フレームなど極端に低いフレームレートで撮影し、それを高フレームレートで再生することで、時間の流れを圧縮した印象的な映像を作成できます。
プロのレビュー:フレームレートと視聴体験
私自身、様々な動画を制作してきましたが、フレームレートが視聴体験に与える影響は想像以上に大きいです。特に、動きの多いコンテンツでフレームレートが低いと、視聴者は「カクカクする」「見づらい」と感じて離脱してしまう可能性があります。一方で、意図的に低フレームレートを使うことで、アート作品のような独特の表現を生み出すことも可能です。常に「誰に、何を、どう見せたいか」を意識してフレームレートを選定することが、プロの動画クリエイターとしての腕の見せ所だと感じています。
まとめ
AviUtlにおけるフレームレートの変更は、動画の見た目やファイルサイズ、さらには視聴体験にまで影響を与える重要な編集作業です。基本的な「設定」メニューからの変更から、AviSynthを用いた高度なフレーム補間まで、様々な方法があることをご理解いただけたでしょうか。
VFR動画の音ズレ問題や最大フレーム数の設定など、知っておくべき注意点も多いですが、これらを適切に管理することで、AviUtlのポテンシャルを最大限に引き出し、あなたのクリエイティブな表現を具現化することができます。本記事で得た知識を活かし、ぜひあなたの動画制作に役立ててください。
関連情報
動画編集の基礎知識や、さらに高度なテクニックについては、以下の記事も参考にしてください。


