AviUtlを動画編集やエンコードに活用する際、毎回同じような設定を繰り返すのは非常に手間がかかります。しかし、AviUtlには「プロファイル」という便利な機能が搭載されており、よく使う設定内容を保存して瞬時に切り替えることが可能です。この機能を使いこなせば、作業効率が飛躍的に向上し、より快適な動画制作環境を構築できます。
この記事では、AviUtlのプロファイル機能の基本から応用までを徹底的に解説します。プロファイルに保存される設定の種類、作成・選択・編集・削除といった基本的な操作はもちろん、設定のバックアップや共有に役立つエクスポート・インポートの考え方、さらにはよくあるトラブルとその対処法まで、動画クリエイターの皆様が知りたい情報を網羅しています。
AviUtlの「プロファイル」とは?設定保存の仕組みを理解しよう
AviUtlにおける「プロファイル」とは、動画のエンコード設定や各種フィルタの適用状況、インターレース解除設定、フレームレート変換設定など、AviUtl本体や導入しているプラグインの様々な設定を一括して保存できる機能です。これにより、プロジェクトごとに異なる設定を素早く呼び出すことができ、作業の効率化に大きく貢献します。
例えば、YouTube投稿用の高画質設定、SNS投稿用の軽量設定、特定のデバイス向けの設定など、用途に応じたプロファイルを作成しておくことで、手間なく最適な環境で作業を進められます。
プロファイルに保存される主な設定
プロファイルには、以下のような動画編集・エンコードに関する多岐にわたる設定が保存されます。
- フィルタ設定: ぼかし、ノイズ除去、色調補正、シャープ化など、動画に適用するエフェクトの詳細なパラメータまで記憶します。
- 出力設定: エンコード時の品質、ビットレート、コーデック、出力形式など。特に「拡張 x264 出力(GUI) Ex」などの出力プラグインの設定はプロファイルに保存されます。
- インターレース解除設定: テレビ録画などインターレース方式の動画を扱う際の設定です。
- フレームレート変換設定: 動画のフレームレートを変更する際の設定です。
- システム設定の一部: AviUtl本体の動作に関する一部の設定もプロファイルに紐づくことがあります。
プロファイルは、単にフィルタのON/OFFだけでなく、そのフィルタの詳細なパラメータまで記憶します。これにより、複雑な調整を何度も行う手間が省けます。
プロファイルに保存されない設定の注意点
一方で、プロファイルには保存されない設定も存在します。例えば、AviUtlのプラグインのパス設定や、一部の環境設定(最大画像サイズ、キャッシュサイズなど)は、AviUtl全体のシステム設定として扱われるため、プロファイルには含まれません。これらの設定は、AviUtlの「システムの設定」や各プラグインの個別設定として管理されます。
また、編集中のプロジェクトファイル(.aup)自体はプロファイルとは別物です。プロファイルはあくまで「設定のテンプレート」であり、実際の動画編集データは別途保存する必要があります。
プロファイルの基本操作:作成・選択・編集・削除
ここからは、AviUtlでプロファイルを効果的に管理するための基本的な操作方法を解説します。
デフォルトプロファイルについて
AviUtlを初めて起動すると、自動的に「デフォルト」という名前のプロファイルが作成されます。この「デフォルト」プロファイルには、その時点で設定されているフィルタやエンコード情報が保存されており、AviUtlを再起動しても同じ設定が維持されます。
新しいプロファイルの作成方法
「デフォルト」プロファイルとは別に、新しいプロファイルを作成したい場合は、現在適用されているプロファイルの設定をコピーして新規作成します。
- AviUtlのメニューバーから「プロファイル」を選択します。
- 「プロファイルの編集」にカーソルを合わせ、「新しいプロファイルを作る」をクリックします。
- 新しいプロファイルの名前を入力し、「OK」をクリックします。
新規プロファイル作成時は、現在適用されている設定がベースになります。そのため、まずは基準となる設定を整えてから新規作成すると効率的です。
プロファイルの選択と切り替え
作成したプロファイルは、メニューから簡単に切り替えることができます。用途に合わせてプロファイルを使い分けることで、作業効率が格段に向上します。
- AviUtlのメニューバーから「プロファイル」を選択します。
- 一覧表示されたプロファイルの中から、適用したいプロファイル名をクリックします。
例えば、「HD動画用」「ゲーム実況用」「SNS短尺動画用」など、自分で管理しやすい名前にしておくと、迷わずに選択できます。

さらに応用として、AviUtlでは動画の特定の区間ごとに異なるプロファイルを適用することも可能です。これにより、動画内で画質やエフェクトを細かく調整したい場合に非常に役立ちます。
プロファイルの内容を編集・更新する方法
現在選択しているプロファイルの設定を変更すると、その変更は自動的に現在のプロファイルに保存されます。例えば、フィルタのパラメータを調整したり、出力設定を変更したりすると、次回そのプロファイルを読み込んだ際に、変更後の設定が適用されます。
プロファイルを初期状態に戻す方法
適用されているフィルタを全て解除し、まっさらな状態のプロファイルに戻したい場合は、以下の手順で行います。
- AviUtlのメニューバーから「プロファイル」を選択します。
- 「プロファイルの編集」にカーソルを合わせ、「現在のプロファイルを初期値に戻す」をクリックします。
この機能は、設定を複雑にいじりすぎて元に戻せなくなった場合や、新しい設定を一から構築したい場合に非常に便利です。特にエンコード設定でエラーが頻発する場合に試す価値があります。
不要なプロファイルの削除方法
不要になったプロファイルは、以下の手順で削除できます。
- 削除したいプロファイルに一度切り替えます。
- AviUtlのメニューバーから「プロファイル」を選択します。
- 「プロファイルの編集」にカーソルを合わせ、「現在のプロファイルを削除する」をクリックします。

誤って必要なプロファイルを削除しないよう、削除前には必ず内容を確認しましょう。特に「デフォルト」プロファイルは、初期設定の基準となるため、安易に削除しないことをお勧めします。
プロファイルの応用:設定のバックアップと共有(エクスポート・インポート)
AviUtlのプロファイルは、単にソフト内で管理するだけでなく、ファイルとしてバックアップしたり、他のPCに移行したり、仲間と共有したりすることも可能です。
プロファイルの実体ファイル(.cfg)について
AviUtlのプロファイルは、通常、AviUtlのインストールフォルダ内に「プロファイル名.cfg」という形式のファイルとして保存されています。例えば、「デフォルト.cfg」というファイルが存在します。この.cfgファイルをコピーすることで、手動でプロファイルをバックアップしたり、別のAviUtl環境に移行したりすることができます。
出力プラグインのプロファイル(.stgなど)の活用
「拡張 x264 出力(GUI) Ex」などの出力プラグインには、独自のプロファイル保存機能が備わっている場合があります。これらのプラグインの設定は、通常「.stg」ファイルとして保存され、プラグインのフォルダ内や特定の場所に格納されます。
例えば、x264guiExでは、出力が成功した際に「前回出力.stg」というファイルに設定が保存される機能があり、設定が初期化されてしまった場合にこのファイルを読み込むことで復旧できます。 また、ffmpegOutのようなプラグインでは、ダウンロードしたプロファイルを特定のフォルダに入れることで、設定画面で利用できるようになります。

定期的にプロファイルファイルをバックアップしておくことで、PCの故障やAviUtlの再インストール時にも、すぐに元の設定環境を復元できます。これは、プロの動画クリエイターにとって非常に重要な習慣です。
プロファイル活用でよくある疑問とトラブルシューティング
AviUtlのプロファイル機能は便利ですが、時に予期せぬ挙動をすることもあります。ここでは、よくある疑問やトラブルとその対処法について解説します。
「設定が保存されない」と感じたら
特定の出力プラグイン(例:x264guiEx、NVEncなど)の設定が、プロファイルを切り替えるたびに初期化されてしまうように感じることがあります。これは、AviUtlのプロファイルが、現在選択されている出力プラグインとその設定を一つだけ保存する仕様になっているためです。
例えば、普段x264guiExで設定しているプロファイルを使い、一度NVEncで出力してしまうと、そのプロファイルにはNVEncの設定が保存されてしまいます。次にx264guiExを使おうとすると、設定が飛んでしまったように見えるのです。
対処法:
- 出力プラグインを切り替える際は、そのプラグインのプロファイル(.stgなど)を別途保存・管理しておく。
- 各出力プラグインの「前回出力」などの復元機能を利用する。
- プロファイルを切り替える際に、意図しない設定変更が起こらないよう注意する。
「ファイルの出力に失敗しました」エラーとプロファイル
AviUtlで動画を出力しようとした際に「ファイルの出力に失敗しました」というエラーが表示されることがあります。この原因の一つとして、プロファイル内のエンコード設定が無茶な値になっている可能性が挙げられます。
対処法:
- 現在使用しているプロファイルを「初期値に戻す」ことで、設定をリセットしてみる。
- 別のプロファイルに切り替えて出力してみる。
- 出力プラグインの設定を一つずつ確認し、適切な値に調整する。
エラーメッセージの内容をよく確認し、Google検索で具体的なエラーコードやメッセージを検索すると、より的確な解決策が見つかることが多いです。
プロファイルが消えてしまった場合の対処法
稀に、AviUtlのプロファイルが予期せず消えてしまうことがあります。これは、AviUtlのフォルダ移動や、システムエラーなどが原因で発生する可能性があります。
対処法:
- 定期的なバックアップ: 前述の通り、AviUtlのインストールフォルダにある「.cfg」ファイルを定期的に別の場所にコピーしてバックアップを取っておくことが最も重要です。
- AviUtlの再起動: 一時的な問題であれば、AviUtlを再起動することで解決する場合があります。
- 再作成: バックアップがない場合は、残念ながら手動でプロファイルを再作成するしかありません。普段からよく使う設定はメモしておくなど、対策を講じておきましょう。
AviUtlプロファイル活用のヒントとベストプラクティス
プロファイルを最大限に活用し、動画編集のワークフローをさらに効率化するためのヒントをいくつかご紹介します。
分かりやすい命名規則の工夫
プロファイル名はその設定内容を瞬時に判断できるような名前にしましょう。例えば、「YouTube_4K_高画質」「SNS_短尺_軽量」「ゲーム実況_ノイズ除去済」など、用途や特徴を盛り込むことで、迷わず適切なプロファイルを選択できます。
用途に応じたプロファイルの使い分け
動画の目的や出力先に合わせて、複数のプロファイルを使い分けることが効率化の鍵です。
プロファイル例 | 主な用途 | 設定のポイント |
---|---|---|
YouTube_4K_高画質 | YouTubeへの高画質投稿 | 高ビットレート、高解像度、高画質フィルタ適用 |
SNS_短尺_軽量 | X(旧Twitter)やTikTokなどSNS投稿 | 低ビットレート、短時間、ファイルサイズ重視 |
ゲーム実況_ノイズ除去済 | ゲーム実況動画 | ノイズ除去フィルタ、音声調整、特定のエンコード設定 |
DVD/Blu-ray用 | ディスク作成用 | MPEG-2/H.264、インターレース解除、特定解像度 |
定期的なバックアップの習慣化
プロファイルファイル(.cfg)は、AviUtlのインストールフォルダ内に保存されています。PCの故障やOSの再インストール、AviUtlのバージョンアップ時などに備え、定期的にこれらのファイルを別のストレージ(クラウドストレージや外付けHDDなど)にバックアップする習慣をつけましょう。これにより、万が一の事態でもすぐに元の作業環境を復元できます。
区間ごとのプロファイル適用(応用テクニック)
AviUtlの拡張編集では、動画の特定の区間ごとに異なるプロファイルを適用する高度な使い方も可能です。例えば、動画の一部だけ画質を上げたり、特定のエフェクトを適用したりする場合に非常に役立ちます。
- タイムライン上でプロファイルを適用したい区間を選択します。
- メニューバーの「編集」から「選択範囲を新しいプロファイルにする」を選択します。
- 新しいプロファイルを作成するか、既存のプロファイルを適用します。
この機能は、特に複雑な動画編集を行う際に、柔軟な表現を可能にします。
まとめ:AviUtlプロファイルをマスターして快適な動画編集を
AviUtlのプロファイル機能は、動画編集のワークフローを劇的に改善する強力なツールです。フィルタ設定やエンコード設定など、頻繁に使う設定をプロファイルとして保存・管理することで、毎回手動で設定する手間を省き、作業時間を大幅に短縮できます。
この記事で解説したプロファイルの作成、選択、編集、削除といった基本操作に加え、バックアップや共有のためのファイル管理、そしてトラブルシューティングの知識を身につけることで、AviUtlをさらに深く使いこなし、あなたの動画制作をより快適で効率的なものにしてください。
プロファイルを活用し、あなたのクリエイティブなアイデアをスムーズに形にしていきましょう。