動画を視聴していると、動きの速いシーンで横方向に「縞々」が発生したり、映像がブレて見えたりすることはありませんか?これは「インターレース方式」で記録された映像を、現代のディスプレイで適切に処理せずに再生した際に起こる現象です。特にテレビ録画の映像や古いビデオカメラのデータなどでよく見られます。
この視覚的なノイズを解消し、クリアで滑らかな映像にするための処理が「インターレース解除(デインターレース)」です。本記事では、無料の動画編集ソフトAviUtlを使って、このインターレース解除を行う方法について、その仕組みから具体的な設定、さらにプロも愛用する高精度なプラグインの活用法まで、動画クリエイターの視点から詳しく解説します。
インターレース解除は、古い映像素材やテレビ録画の映像を現代のディスプレイで美しく表示するために不可欠な処理です。この一手間で、視聴体験は格段に向上します。
インターレースとプログレッシブ:映像表示の基本を理解する
インターレース解除の必要性を深く理解するためには、まず「インターレース」と「プログレッシブ」という2つの映像表示方式について知ることが重要です。これらは、映像がどのように記録され、表示されるかを決定する基本的な概念です。
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インターレース方式:アナログ時代の効率的な映像伝送技術
インターレース(Interlace)方式は、1つのフレームを「偶数フィールド」と「奇数フィールド」の2つに分割し、それぞれに異なる時点の映像情報を記録・伝送する方式です。具体的には、1フレーム目の奇数ラインに1コマ目の映像を、偶数ラインに2コマ目の映像を記録します。受信側では、これらのフィールドを交互に高速で表示することで、人間の目にはあたかも2コマ分の映像が連続して表示されているように見せます。
この方式は、アナログ放送時代にデータ転送量を抑えつつ、滑らかな動きを再現するために工夫された画期的な技術でした。少ない帯域幅で効率的に映像を伝送できるという大きなメリットがあったのです。
しかし、デジタル環境でインターレース映像をそのまま表示すると、偶数と奇数のフィールドが同時に表示されてしまい、動きのある部分で横縞(コームノイズ)が発生したり、映像がブレて見えたりする原因となります。
プログレッシブ方式:現代の主流となる高画質表示
一方、プログレッシブ(Progressive)方式は、1つのフレームに1コマ分の映像情報を完全に記録・伝送する方式です。すべての走査線(ライン)を一度に表示するため、動きの速いシーンでも横縞が発生せず、クリアで安定した映像が得られます。
現代のデジタルカメラ、スマートフォン、PCディスプレイ、そしてほとんどのストリーミングサービス(YouTubeなど)はプログレッシブ方式を採用しています。 データ量はインターレース方式よりも多くなりますが、高速なデータ転送が可能な現代においては、高画質・高精細な映像を実現するための標準的な方式となっています。

「i」と「p」で簡単に見分けられます!例えば「1080i」はインターレース、「1080p」はプログレッシブを意味します。動画ファイルのプロパティで確認してみましょう。
なぜインターレース解除が必要なのか?
インターレース解除は、インターレース方式で記録された映像を、プログレッシブ方式の映像に変換する処理です。これにより、横縞やブレを解消し、現代のディスプレイで自然で滑らかな映像として表示できるようになります。 特に、以下のような場合にインターレース解除が推奨されます。
- テレビ録画した映像をPCやスマートフォンで視聴・編集する場合
- 古いビデオカメラ(DVテープなど)で撮影した映像をデジタル化する場合
- インターレース方式で出力された動画データをYouTubeなどの動画共有サイトにアップロードする場合
インターレース解除には、1つのフレームから2つのフィールドを取り出して1つのフレームに統合する方法や、片方のフィールドを補間して新しいフレームを生成する方法などがあります。 これにより、解像度が半分になるデメリットが生じる場合もありますが、動きの滑らかさを保ちつつ、視覚的な品質を向上させることが可能です。
AviUtlでインターレース解除を行う具体的な方法
AviUtlでは、標準機能とプラグインの両方でインターレース解除が可能です。ここでは、それぞれの方法と設定について詳しく見ていきましょう。

AviUtl標準のインターレース解除設定
AviUtlの基本的なインターレース解除設定は、メニューバーの「設定」からアクセスできます。
- AviUtlを起動し、インターレース解除したい動画ファイルを読み込みます。
- メニューバーの「設定」をクリックします。
- 「インターレースの解除」にカーソルを合わせると、サブメニューが表示されます。
表示される主なオプションは以下の通りです。
- なし: インターレース解除を行いません。プログレッシブ映像の場合や、再生環境がインターレースに対応している場合はこれを選択します。
- 自動: 読み込んだ動画のフレームレート(通常30fps)に合わせて、自動的にインターレース解除を行います。多くのケースでこの設定が有効です。
- 自動24fps: 24fpsの映像(映画など)に対してインターレース解除を行う場合の設定です。テレビ放送やDVDで24fpsの映画がインターレース化されている場合に利用します。
まずは「自動」を試してみて、縞々が解消されるか確認するのが一般的です。もし解消されない場合は、他の設定を試すか、後述のプラグインの導入を検討しましょう。

プログレッシブ映像にインターレース解除は不要です。誤って適用すると、かえって画質が劣化する可能性があるので注意しましょう。
フィールドオーダーの設定
インターレース映像では、偶数フィールドと奇数フィールドのどちらから映像が記録されているか(フィールドオーダー)が機器や規格によって異なります。AviUtlでは、このフィールドオーダーも設定できます。
「設定」メニューの「フィールドオーダー」から以下の選択肢があります。
- ボトムフィールドファースト(BFF): 偶数フィールドから記録されている場合。古いDV規格などでよく見られます。
- トップフィールドファースト(TFF): 奇数フィールドから記録されている場合。多くのデジタル放送やDVDなどで見られます。
どちらが正しいかは、元の映像ソースによって異なります。もしインターレース解除をしても縞々が残る、または逆に縞々が目立つようになった場合は、フィールドオーダーを切り替えて試してみましょう。見た目で判断するのが最も確実な方法です。

「自動フィールドシフト」プラグインによる高精度な解除
AviUtl標準のインターレース解除で満足できない場合や、より高品質な解除を求める場合は、「自動フィールドシフト(Automatic Field Shift: AFS)」プラグインの導入が強く推奨されます。AFSは、インターレース解除の精度が非常に高く、多くのAviUtlユーザーに利用されている定番プラグインです。
自動フィールドシフトの導入方法
- プラグインのダウンロード: 「自動フィールドシフト」で検索し、配布サイトからプラグイン(通常は
afs.auf
ファイル)をダウンロードします。 - ファイルの配置: ダウンロードした
afs.auf
ファイルを、AviUtlのインストールフォルダ内にある「Plugins」フォルダにコピーします。 - AviUtlの再起動: AviUtlを一度終了し、再度起動します。
自動フィールドシフトの使い方
- AviUtlに動画ファイルを読み込みます。
- メニューバーの「設定」をクリックします。
- 「インターレースの解除」にカーソルを合わせると、「自動フィールドシフト」の項目が追加されていますので、これを選択します。
AFSは、映像の内容を解析して最適なインターレース解除を行うため、通常は特別な設定は不要です。しかし、より詳細な設定を行いたい場合は、「設定」メニューの「自動フィールドシフトの設定」から調整することも可能です。
特徴 | 説明 |
---|---|
高精度な検出 | 映像の動きやパターンを解析し、インターレース部分を正確に検出します。 |
自然な解除 | 不自然な補間を避け、元の映像の質感を保ちながら解除を行います。 |
幅広い対応 | 様々なインターレース方式やフレームレートに対応しています。 |
設定の柔軟性 | 詳細な設定項目があり、ユーザーのニーズに合わせて調整可能です。 |

AFSは、特に動きの激しいシーンや、テロップなど細かい部分で縞々が目立つ場合にその効果を実感しやすいでしょう。一度試す価値は十分にあります。
AFSは非常に強力なツールですが、処理が複雑になるため、AviUtlが若干重くなったり、エンコードに時間がかかったりする場合があります。 ご自身のPCスペックと相談しながら利用しましょう。

インターレース解除後の注意点と最適な出力設定
インターレース解除を行った後は、その効果を最大限に活かすための出力設定も重要です。
プレビューで効果を確認する
インターレース解除の設定を変更したら、必ずAviUtlのプレビュー画面で映像を確認しましょう。特に、動きの速いシーンや、文字が流れるような部分で縞々が解消されているか、不自然なブレが発生していないかなどを注意深くチェックします。
出力時の設定
インターレース解除を行った映像は、プログレッシブ形式で出力することが基本です。出力プラグイン(例えばx264guiExなど)の設定で、フレームレートを元の映像の2倍(例:29.97iであれば59.94p)にするか、または元のフレームレート(例:29.97iであれば29.97p)で出力するかは、映像の用途や求める品質によって異なります。
- フレームレートを倍にする(例:29.97i → 59.94p): 動きがより滑らかになりますが、ファイルサイズが大きくなる傾向があります。
- フレームレートを維持する(例:29.97i → 29.97p): ファイルサイズを抑えられますが、動きの滑らかさは倍速の場合に劣る可能性があります。
一般的には、元のインターレース映像が持っていた情報量を最大限に活かすために、フレームレートを倍にしてプログレッシブ出力(例:60i → 60p)することが推奨されます。これにより、動きの滑らかさを保ちつつ、高画質な映像が得られます。
出力設定で「インターレース解除」のチェックボックスがある場合は、必ずチェックを入れてください。これにより、AviUtl上で行った解除処理が最終的な出力ファイルにも適用されます。また、自動フィールドシフトを使用する場合は、対応した出力プラグイン(例: x264guiExの「自動フィールドシフトを使用する」チェックボックス)を利用することで、その効果を最大限に引き出せます。
まとめ:AviUtlでクリアな映像を手に入れよう
AviUtlを使ったインターレース解除は、古い映像素材やテレビ録画の映像を現代の視聴環境で美しく再生するために非常に有効な手段です。インターレースとプログレッシブの違いを理解し、AviUtlの標準機能や「自動フィールドシフト」プラグインを適切に活用することで、横縞やブレのない、クリアで滑らかな映像を実現できます。
本記事で紹介した方法を参考に、ぜひあなたの映像素材を最高の品質に引き上げてみてください。少しの手間をかけるだけで、視聴体験は格段に向上するはずです。
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動画を視聴していると、動きの速いシーンで横方向に「縞々」が発生したり、映像がブレて見えたりすることはありませんか?これは「インターレース方式」で記録された映像を、現代のディスプレイで適切に処理せずに再生した際に起こる現象です。特にテレビ録画の映像や古いビデオカメラのデータなどでよく見られます。
この視覚的なノイズを解消し、クリアで滑らかな映像にするための処理が「インターレース解除(デインターレース)」です。本記事では、無料の動画編集ソフトAviUtlを使って、このインターレース解除を行う方法について、その仕組みから具体的な設定、さらにプロも愛用する高精度なプラグインの活用法まで、動画クリエイターの視点から詳しく解説します。
インターレース解除は、古い映像素材やテレビ録画の映像を現代のディスプレイで美しく表示するために不可欠な処理です。この一手間で、視聴体験は格段に向上します。
インターレースとプログレッシブ:映像表示の基本を理解する
インターレース解除の必要性を深く理解するためには、まず「インターレース」と「プログレッシブ」という2つの映像表示方式について知ることが重要です。これらは、映像がどのように記録され、表示されるかを決定する基本的な概念です。
動画テンプレートなら編集も簡単
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インターレース方式:アナログ時代の効率的な映像伝送技術
インターレース(Interlace)方式は、1つのフレームを「偶数フィールド」と「奇数フィールド」の2つに分割し、それぞれに異なる時点の映像情報を記録・伝送する方式です。具体的には、1フレーム目の奇数ラインに1コマ目の映像を、偶数ラインに2コマ目の映像を記録します。受信側では、これらのフィールドを交互に高速で表示することで、人間の目にはあたかも2コマ分の映像が連続して表示されているように見せます。
この方式は、アナログ放送時代にデータ転送量を抑えつつ、滑らかな動きを再現するために工夫された画期的な技術でした。少ない帯域幅で効率的に映像を伝送できるという大きなメリットがあったのです。
しかし、デジタル環境でインターレース映像をそのまま表示すると、偶数と奇数のフィールドが同時に表示されてしまい、動きのある部分で横縞(コームノイズ)が発生したり、映像がブレて見えたりする原因となります。
プログレッシブ方式:現代の主流となる高画質表示
一方、プログレッシブ(Progressive)方式は、1つのフレームに1コマ分の映像情報を完全に記録・伝送する方式です。すべての走査線(ライン)を一度に表示するため、動きの速いシーンでも横縞が発生せず、クリアで安定した映像が得られます。
現代のデジタルカメラ、スマートフォン、PCディスプレイ、そしてほとんどのストリーミングサービス(YouTubeなど)はプログレッシブ方式を採用しています。 データ量はインターレース方式よりも多くなりますが、高速なデータ転送が可能な現代においては、高画質・高精細な映像を実現するための標準的な方式となっています。

「i」と「p」で簡単に見分けられます!例えば「1080i」はインターレース、「1080p」はプログレッシブを意味します。動画ファイルのプロパティで確認してみましょう。
なぜインターレース解除が必要なのか?
インターレース解除は、インターレース方式で記録された映像を、プログレッシブ方式の映像に変換する処理です。これにより、横縞やブレを解消し、現代のディスプレイで自然で滑らかな映像として表示できるようになります。 特に、以下のような場合にインターレース解除が推奨されます。
- テレビ録画した映像をPCやスマートフォンで視聴・編集する場合
- 古いビデオカメラ(DVテープなど)で撮影した映像をデジタル化する場合
- インターレース方式で出力された動画データをYouTubeなどの動画共有サイトにアップロードする場合
インターレース解除には、1つのフレームから2つのフィールドを取り出して1つのフレームに統合する方法や、片方のフィールドを補間して新しいフレームを生成する方法などがあります。 これにより、解像度が半分になるデメリットが生じる場合もありますが、動きの滑らかさを保ちつつ、視覚的な品質を向上させることが可能です。
AviUtlでインターレース解除を行う具体的な方法
AviUtlでは、標準機能とプラグインの両方でインターレース解除が可能です。ここでは、それぞれの方法と設定について詳しく見ていきましょう。

AviUtl標準のインターレース解除設定
AviUtlの基本的なインターレース解除設定は、メニューバーの「設定」からアクセスできます。
- AviUtlを起動し、インターレース解除したい動画ファイルを読み込みます。
- メニューバーの「設定」をクリックします。
- 「インターレースの解除」にカーソルを合わせると、サブメニューが表示されます。
表示される主なオプションは以下の通りです。
- なし: インターレース解除を行いません。プログレッシブ映像の場合や、再生環境がインターレースに対応している場合はこれを選択します。
- 自動: 読み込んだ動画のフレームレート(通常30fps)に合わせて、自動的にインターレース解除を行います。多くのケースでこの設定が有効です。
- 自動24fps: 24fpsの映像(映画など)に対してインターレース解除を行う場合の設定です。テレビ放送やDVDで24fpsの映画がインターレース化されている場合に利用します。
まずは「自動」を試してみて、縞々が解消されるか確認するのが一般的です。もし解消されない場合は、他の設定を試すか、後述のプラグインの導入を検討しましょう。

プログレッシブ映像にインターレース解除は不要です。誤って適用すると、かえって画質が劣化する可能性があるので注意しましょう。
フィールドオーダーの設定
インターレース映像では、偶数フィールドと奇数フィールドのどちらから映像が記録されているか(フィールドオーダー)が機器や規格によって異なります。AviUtlでは、このフィールドオーダーも設定できます。
「設定」メニューの「フィールドオーダー」から以下の選択肢があります。
- ボトムフィールドファースト(BFF): 偶数フィールドから記録されている場合。古いDV規格などでよく見られます。
- トップフィールドファースト(TFF): 奇数フィールドから記録されている場合。多くのデジタル放送やDVDなどで見られます。
どちらが正しいかは、元の映像ソースによって異なります。もしインターレース解除をしても縞々が残る、または逆に縞々が目立つようになった場合は、フィールドオーダーを切り替えて試してみましょう。見た目で判断するのが最も確実な方法です。

「自動フィールドシフト」プラグインによる高精度な解除
AviUtl標準のインターレース解除で満足できない場合や、より高品質な解除を求める場合は、「自動フィールドシフト(Automatic Field Shift: AFS)」プラグインの導入が強く推奨されます。AFSは、インターレース解除の精度が非常に高く、多くのAviUtlユーザーに利用されている定番プラグインです。
自動フィールドシフトの導入方法
- プラグインのダウンロード: 「自動フィールドシフト」で検索し、配布サイトからプラグイン(通常は
afs.auf
ファイル)をダウンロードします。 - ファイルの配置: ダウンロードした
afs.auf
ファイルを、AviUtlのインストールフォルダ内にある「Plugins」フォルダにコピーします。 - AviUtlの再起動: AviUtlを一度終了し、再度起動します。
自動フィールドシフトの使い方
- AviUtlに動画ファイルを読み込みます。
- メニューバーの「設定」をクリックします。
- 「インターレースの解除