iPhoneやiPadのiMovieで動画編集を行う際、メインの映像に別の動画や写真を重ねて表示したい場面は多々あります。そんな時に活躍するのが「ピクチャ・イン・ピクチャ(PiP)」機能です。この機能を使えば、メインの映像の上に別の素材を小窓のように配置し、同時に表示させることができます。テレビ番組でよく見かけるワイプ表示や、YouTubeのゲーム実況、チュートリアル動画での画面解説など、動画の表現の幅を大きく広げることが可能です。
この記事では、iPhone/iPad版iMovieのピクチャ・イン・ピクチャ機能の基本的な使い方から、より効果的な活用術、そして知っておくべき制限事項と代替案まで、プロの動画クリエイターの視点から詳しく解説します。あなたの動画編集スキルを次のレベルへ引き上げるためのヒントが満載です。
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iPhone/iPad版iMovieで動画編集 応用編
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ピクチャ・イン・ピクチャとは?動画表現を豊かにする基本機能
ピクチャ・イン・ピクチャ(Picture-in-Picture、略してPiP)とは、動画編集において、メインの映像クリップの上に別の動画や写真クリップを重ねて表示する機能のことです。直訳すると「絵の中の絵」となり、その名の通り、一つの画面の中に複数の映像を同時に見せることを可能にします。この機能は、視聴者の理解を深めたり、動画に面白みを加えたりする上で非常に重要な役割を果たします。例えば、以下のようなシーンで活用されます。
- ゲーム実況・リアクション動画:ゲーム画面の隅に実況者の顔をワイプで表示する。
- チュートリアル・解説動画:メインの操作画面の横に、解説者の顔や関連資料を小さく表示する。
- 商品紹介動画:商品の全体像を見せながら、細部のアップを小窓で表示する。
- 結婚式ムービー:背景にデザイン素材を配置し、その上に新郎新婦の写真や動画を重ねるプロフィールムービーなど。
ピクチャ・イン・ピクチャは、単に複数の映像を並べるだけでなく、視聴者の視線を誘導し、伝えたい情報を効果的に強調するための強力なツールです。特に、情報量が多い動画や、視覚的なインパクトを重視する動画では、その効果を最大限に発揮します。
iPhone/iPad版iMovieでピクチャ・イン・ピクチャを利用する基本手順
iPhone/iPad版iMovieでも、Mac版iMovieとほぼ同等レベルでピクチャ・イン・ピクチャの自由な配置が可能です。ここでは、その基本的な操作手順を詳しく見ていきましょう。
1. プロジェクトの作成とメインクリップの配置
まずは、iMovieアプリを開き、新しいプロジェクトを作成します。編集したいメインの動画や写真クリップをタイムラインに配置してください。これが、ピクチャ・イン・ピクチャで重ねる素材の「背景」となります。
2. ピクチャ・イン・ピクチャで配置したい素材の選択
次に、ピクチャ・イン・ピクチャとして重ねたい写真や動画クリップをライブラリから選択します。素材をタップすると表示されるメニューの中から「…」をタップします。
3. 「ピクチャ・イン・ピクチャ」を選択して配置
表示されたメニューの中から「ピクチャ・イン・ピクチャ」を選択します。これで、メインとなるクリップの上に重ねる形で素材が配置されます。
ピクチャ・イン・ピクチャを適用すると、以下のようにメイントラックの上に重ねて表示されます。

ピクチャ・イン・ピクチャで素材を配置する際、タイムラインの再生ヘッドの位置に注意しましょう。素材を挿入したい正確な位置に再生ヘッドを合わせてから操作すると、スムーズに配置できます。
ピクチャ・イン・ピクチャクリップの調整と応用テクニック
ピクチャ・イン・ピクチャで配置した素材は、位置やサイズ、表示方法を自由に調整できます。クリップをタップして調整可能な状態にしましょう。
1. 位置とサイズの調整
ピクチャ・イン・ピクチャクリップをタップすると、プレビュー画面内で編集ができるようになります。ビューア上にあるメニューの真ん中のアイコンをタップすると、位置とサイズの変更が可能です。
- ドラッグ:クリップを指でドラッグして、画面内の好きな位置に移動させます。
- ピンチ(指2本による拡大と縮小):2本の指でピンチイン・ピンチアウトすることで、クリップのサイズを自由に変更できます。
2. クロップ(サイズ)の調整
ピクチャ・イン・ピクチャの枠の中で表示するクリップの拡大率を変更できます。これは、ピクチャ・イン・ピクチャの枠の中でどこまで表示するのか(クロップ)を調整する項目です。Mac版iMovieの「サイズ調整してクロップ」や「フィット」と似た効果が得られます。
3. 輪郭線(枠線)の調整
ビューア上で表示されるメニューの一番下にある項目をクリックすると、ピクチャ・イン・ピクチャで挿入した素材の輪郭に線を追加できます。iPhone/iPad版iMovieでは枠線の色は「白」で固定されています。

輪郭線は、ワイプ表示されたクリップをメイン画面から際立たせ、視認性を高めるのに役立ちます。特に背景が複雑な場合に効果的です。
iPhone/iPad版iMovieとMac版iMovieのPiP機能比較:知っておくべき制限
iPhone/iPad版iMovieでもピクチャ・イン・ピクチャ機能は搭載されていますが、Mac版iMovieと比較するといくつかの機能が制限されています。より高度な編集を行いたい場合は、Mac版への移行も検討する価値があります。
iPhone/iPad版iMovieのピクチャ・イン・ピクチャにおける主な制限事項:
- 輪郭線は白に限定され、太さも変更できません。
- 影(ドロップシャドウ)の描画はできません。
- ピクチャ・イン・ピクチャのフェード効果や時間の設定はできません。
- ピクチャ・イン・ピクチャクリップのアニメーション(動き)はできません。
これらの機能はiPhone/iPad版iMovieでは利用できませんが、Mac版iMovieでは全て行うことができます。
以下に、iPhone/iPad版とMac版のiMovieにおけるピクチャ・イン・ピクチャ機能の主な違いをまとめました。
機能 | iPhone/iPad版iMovie | Mac版iMovie |
---|---|---|
位置・サイズ調整 | 可能 | 可能 |
クロップ(拡大率)調整 | 可能 | 可能 |
輪郭線(色) | 白のみ | 自由に変更可能 |
輪郭線(太さ) | 変更不可 | 変更可能 |
影(ドロップシャドウ) | 不可 | 可能 |
フェード効果 | 不可 | 可能 |
アニメーション | 不可 | 可能 |
複数同時表示 | 1つまで | 1つまで(同じ再生ヘッド上) |
iMovieのピクチャ・イン・ピクチャで「できないこと」とプロが選ぶ代替案
iMovieは無料で使える動画編集ソフトとしては非常に高機能ですが、他のプロフェッショナルな動画編集ソフトと比較すると、いくつかの制限があります。特にピクチャ・イン・ピクチャ機能においては、以下の点が挙げられます。
- 同時に重ねて表示できるのは1つまで:メインクリップの上に、ピクチャ・イン・ピクチャクリップを同時に複数重ねて表示することはできません。同じ再生ヘッド位置に複数の素材を挿入しようとすると、「再生ヘッド位置にオーバーレイがすでにあります」という表示が出てしまいます。,
- テキストの自由な配置:結婚式のエンドロールでよく見られるような、名簿一覧をずらして配置するような表現は、テキストの位置を自由に調整できないため作成が困難です。
たくさんの写真や動画クリップを集めてモザイク画のような表現を合成したり、複雑なレイアウトを作成したりすることは、iMovieのピクチャ・イン・ピクチャ機能では難しいのが現状です。簡単に操作できる反面、高度な機能が省かれているのがiMovieの特徴の一つと言えるでしょう。

もし複数のワイプを同時に表示したい場合や、より複雑なアニメーションを加えたい場合は、Adobe Premiere ProやFinal Cut Proなどのプロフェッショナルな動画編集ソフトの利用を検討しましょう。無料の代替案としては、Filmoraなどの多機能なアプリも選択肢になります。,,
【実践レビュー】結婚式ムービー制作におけるiMovie PiPの活用と限界
結婚式のオープニングムービーやプロフィールムービーでは、背景にデザイン素材を配置し、その上に新郎新婦の写真や動画を重ねる「ピクチャ・イン・ピクチャ」の活用が非常に効果的です。iMovieでも、この基本的なレイアウトは手軽に作成できます。
しかし、前述の通り、iMovieでは同時に重ねられる素材が1つに限られるため、例えば「新郎と新婦の写真を同時にワイプで表示し、さらにコメントも重ねる」といった複雑な演出は、iMovie単体では実現が困難です。また、エンドロールでゲストの名前を複数列で流したり、特定の場所に固定表示したりするような細かいテキスト配置も、iMovieの機能では対応しきれない場合があります。
実際にiMovieで結婚式ムービーを制作したユーザーからは、「手軽に作れるが、凝った演出には限界がある」という声が聞かれます。特に、ゲストを「あっ」と言わせるようなユニークな演出や、プロのようなクオリティを求める場合は、より高機能なソフトの検討が推奨されます。
iMovieは無料でありながら、基本的な動画編集機能が充実しているため、初めての結婚式ムービー制作には良い選択肢です。しかし、より凝った演出や、プロのような仕上がりを目指すのであれば、有料の動画編集ソフトや、専門業者への依頼も視野に入れると良いでしょう。



まとめ:iPhone/iPad版iMovieのピクチャ・イン・ピクチャを最大限に活用するために
iPhone/iPad版iMovieのピクチャ・イン・ピクチャ機能は、手軽に動画の表現力を高めるための非常に便利なツールです。ワイプ表示や解説動画、シンプルな合成など、多くの場面で活躍します。基本的な操作は直感的で分かりやすく、初心者でもすぐに使いこなせるでしょう。
一方で、Mac版iMovieや他のプロ向けソフトと比較すると、機能に制限があることも理解しておく必要があります。特に、複数のオーバーレイを同時に表示したい場合や、より複雑なアニメーション、細かなデザイン調整を求める場合は、iMovieの限界を感じるかもしれません。,
しかし、無料アプリでありながらこれだけの機能を提供しているiMovieは、動画編集の第一歩としては最適な選択肢です。まずはiPhoneやiPadでピクチャ・イン・ピクチャ機能を存分に活用し、動画編集の楽しさを体験してみてください。そこからさらに高度な表現に挑戦したくなった時に、より専門的なソフトへの移行を検討するのが良いでしょう。
あなたのアイデア次第で、iMovieのピクチャ・イン・ピクチャ機能は、想像以上のクリエイティブな動画制作を可能にします。