Adobe Premiere Proでの動画編集において、不要なクリップの削除は日常的に行う重要な作業です。しかし、ただ削除するだけではタイムラインに空白(ギャップ)が生じ、後の編集フローに影響を与えることも少なくありません。本記事では、Premiere Proのタイムラインで不要なクリップを効率的に削除するためのあらゆる方法を、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。基本的な削除方法から、ギャップの適切な処理、そして編集効率を飛躍的に高めるリップル削除や一括削除のテクニックまで、動画クリエイターが知っておくべき知識を網羅します。
Premiere Proで不要なクリップを削除する基本
Premiere Proのシーケンス内で不要になったクリップを削除する最も基本的な方法は、キーボードのDeleteキーを使用することです。これは動画、写真、テキストなど、あらゆる種類のクリップに適用できます。
クリップを選択して「Delete」キーで削除
タイムライン上の不要なクリップを選択し、キーボードの[Delete]
キーを押すだけで、そのクリップをシーケンスから削除できます。この操作は非常に頻繁に行うため、ショートカットキーを覚えることが編集効率向上に直結します。また、複数のクリップをまとめて選択し、一度に削除することも可能です。複数のクリップを選択するには、[Shift]
キーを押しながらクリックするか、ドラッグで範囲選択します。
右クリックメニューから「消去」を選択
もう一つの基本的な削除方法は、削除したいクリップを右クリックし、コンテキストメニューから「消去」を選択することです。これはDeleteキーと同じ結果をもたらします。
どちらの方法でもクリップは削除されますが、削除されたクリップがあった場所には空白の領域、つまり「ギャップ」が残ります。このギャップは、動画の尺に影響を与え、意図しない空白時間として再生されるため、適切に処理する必要があります。

動画編集では、キーボードショートカットを覚えることが作業効率を格段に向上させます。特にDeleteキーは頻繁に使うので、指が自然に動くように練習しましょう。
削除後に生じる「ギャップ」を理解し処理する
Premiere Proでクリップを単純に削除すると、タイムライン上に空白の領域が生まれます。これが「ギャップ」です。このギャップを放置すると、動画の再生中に不自然な空白時間ができてしまうため、適切に処理することが重要です。
タイムラインの空白「ギャップ」とは?
ギャップは、削除されたクリップの長さ分だけタイムライン上に残る空きスペースです。例えば、5秒のクリップを削除した場合、その場所に5秒の空白ができます。この空白は、後続のクリップが自動的に前に詰まることはありません。
個別のギャップを削除する
タイムラインに生じたギャップは、個別に削除することができます。ギャップ部分を右クリックすると表示されるメニューから「ギャップを削除」を選択します。これにより、そのギャップが埋められ、後続の全てのクリップが自動的に前に移動します。
クリップとギャップを同時に削除する「リップル削除」
Premiere Proの編集作業で最も頻繁に利用され、効率を高めるのが「リップル削除」です。これは、クリップの削除とそれに伴うギャップの削除を同時に行う機能です。
リップル削除とは?そのメリット
リップル削除は、選択したクリップを削除すると同時に、そのクリップが占めていたタイムライン上の空白を自動的に詰めてくれる機能です。これにより、手動でギャップを削除する手間が省け、編集時間を大幅に短縮できます。特に、カット編集を繰り返す際に非常に有効です。
リップル削除の実行方法
リップル削除にはいくつかの方法があります。
ショートカットキー(Shift + Delete / Option + Delete)
最も推奨される方法は、キーボードショートカットを使用することです。Windowsでは[Shift] + [Delete]
、Macでは[Option] + [Delete]
(または[Shift] + [Delete]
)を同時に押すことで、選択したクリップをリップル削除できます。
右クリックメニューから「リップル削除」
削除したいクリップを右クリックし、コンテキストメニューから「リップル削除」を選択することも可能です。
編集メニューからの操作
上部メニューバーの「編集」から「リップル削除」を選択することでも実行できます。ショートカットキーを忘れてしまった場合や、メニューから確認したい場合に便利です。

リップル削除は、特にVlogやYouTube動画のようにテンポの良いカット編集が求められる場合に真価を発揮します。無駄な空白を自動で詰めてくれるため、編集のストレスが軽減され、作業に集中できます。
複数のギャップを一括で効率的に削除する
長尺の動画編集や、多数のカットを繰り返した結果、タイムラインに多くの小さなギャップが散在することがあります。これらを一つずつリップル削除するのは手間がかかります。Premiere Proには、これらのギャップを一括で削除する便利な機能があります。
「シーケンスからギャップを詰める」機能
タイムライン上の全てのギャップを一度に削除するには、「シーケンス」メニューから「ギャップを詰める」を選択します。この機能は、Windowsでは[Ctrl] + [G]
、Macでは[Cmd] + [G]
のショートカットキーでも実行できます。
この一括削除機能は、特にインタビュー動画の「えー」「あー」といった不要な間を細かくカットした後に非常に役立ちます。手動で一つずつギャップを詰める必要がなくなり、大幅な時間短縮に繋がります。
削除方法 | 操作 | 結果 | 主な使用シーン |
---|---|---|---|
**Deleteキー(消去)** | クリップを選択し[Delete] キーを押す、または右クリック「消去」 |
クリップが削除され、その場所にギャップ(空白)が残る | クリップを一時的に非表示にしたい、後で別のクリップを挿入する予定がある場合 |
**ギャップを削除** | ギャップ部分を右クリックし「ギャップを削除」 | 選択したギャップが削除され、後続クリップが前に詰まる | Deleteキーで削除した後に生じたギャップを個別に埋めたい場合 |
**リップル削除** | クリップを選択し[Shift] + [Delete] (Win)/[Option] + [Delete] (Mac)、または右クリック「リップル削除」 |
クリップが削除され、同時にギャップも自動的に詰まる | テンポの良いカット編集、不要な部分を完全に削除して尺を詰めたい場合 |
**シーケンスからギャップを詰める** | 「シーケンス」メニューから「ギャップを詰める」、または[Ctrl] + [G] (Win)/[Cmd] + [G] (Mac) |
タイムライン上の全てのギャップを一括で削除し、クリップを前に詰める | 多数のカットを行った後、残った全てのギャップを一度に処理したい場合 |
リップル削除ができない?よくある原因と対処法
リップル削除は非常に便利な機能ですが、時には意図した通りに機能しないことがあります。その最も一般的な原因は、タイムライン上の他のトラックがロックされていることです。
トラックがロックされている場合
リップル削除は、削除対象のクリップだけでなく、そのクリップの後続にある全てのクリップを前に移動させることでギャップを詰めます。もし、他のトラック(例えば、BGMトラックやテロップトラックなど)に、削除しようとしているクリップの範囲と重なるクリップがあり、かつそのトラックがロックされている場合、Premiere Proはタイムライン全体の整合性を保つためにリップル削除を許可しません。
解決策:トラックのロックを解除する
リップル削除ができない場合は、まずタイムラインの左側にあるトラックヘッダーを確認し、関連するトラックに鍵のアイコン(トラックロックの切り替え)が表示されていないか確認してください。鍵のアイコンが青くなっている場合はロックされている状態です。これをクリックしてロックを解除(鍵のアイコンを灰色にする)することで、リップル削除が可能になります。

トラックのロックは、意図しない編集や誤操作から重要なクリップを保護するための便利な機能です。しかし、リップル削除のようにタイムライン全体に影響を与える操作を行う際は、一時的にロックを解除する必要があることを覚えておきましょう。
Premiere Proのクリップ削除をマスターするためのヒント
Premiere Proでのクリップ削除は、単なる素材の除去以上の意味を持ちます。これらの機能を使いこなすことで、編集ワークフローを最適化し、よりスムーズで効率的な動画制作が可能になります。
各削除方法の使い分けと編集ワークフロー
- **単純な削除(Deleteキー):** 後で別の素材を挿入する予定がある場合や、一時的にクリップを非表示にしたい場合に便利です。ギャップが残るため、後から手動で埋めるか、一括削除を検討します。
- **リップル削除(Shift+Delete):** 最も頻繁に使うべき方法です。不要な部分を完全に削除し、タイムラインの尺を詰めることで、動画のテンポを調整したり、最終的な尺を確定させたりする際に重宝します。
- **ギャップの一括削除(Ctrl/Cmd+G):** 長時間のフリートークやインタビュー動画など、細かくカットした後に大量のギャップが発生した場合に、まとめて処理するのに最適です。
関連する効率化テクニック
クリップの削除と合わせて、以下の記事も参考にすることで、Premiere Proでの編集効率をさらに高めることができます。
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動画編集の基本となるカット編集について深く学びたい方は、こちらの記事もご覧ください。 【Premiere Pro】カット編集の基本をマスター!動画をスムーズにつなぐ方法
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タイムラインの特定範囲を一括で編集・削除するテクニックは、こちらの記事で詳しく解説しています。 【Premiere Pro】タイムラインの特定範囲を一括編集!効率化テクニック集
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ギャップ処理全般に関するより詳細な情報や、ギャップを自動で見つける機能については、こちらの記事が参考になります。 【Premiere Pro】タイムラインのギャップを効率的に処理!初心者向けガイド
まとめ
Premiere Proにおけるクリップの削除は、単に不要な素材を取り除く作業ではありません。ギャップの概念を理解し、単純な削除、リップル削除、そしてギャップの一括削除といった複数の方法を適切に使い分けることで、編集の効率性と精度を大きく向上させることができます。特にリップル削除のショートカットキー[Shift] + [Delete]
(Windows)または[Option] + [Delete]
(Mac)は、Premiere Proでの動画編集において最も重要なショートカットの一つです。これらのテクニックを習得し、あなたの動画編集ワークフローをさらにスムーズでプロフェッショナルなものにしていきましょう。