結婚式のオープニングムービーは、新郎新婦の個性や感謝の気持ちを伝える大切な演出です。ゲストの期待感を高め、披露宴を華やかに彩るためには、BGM選びが非常に重要になります。しかし、好きな音楽を自由に使えるわけではありません。そこには「著作権」という、誰もが知っておくべき大切なルールが存在します。
「結婚式はプライベートなものだから大丈夫だろう」と思われがちですが、実はそうではありません。結婚式場という「公の場」で音楽を流す行為は、「私的利用」とは認められず、著作権法上の「商用利用」とみなされることがほとんどです。 無許可で楽曲を使用すると、著作権侵害となり、最悪の場合、ムービーの上映が中止されたり、法的なトラブルに発展したりする可能性もあります。
この記事では、ブライダル業界のWebコンテンツ編集者・SEOエキスパートとして、「オープニングムービーの音楽著作権」について、基本知識から具体的な手続き、侵害を回避する方法まで、網羅的に解説します。安心して最高のオープニングムービーを制作し、ゲストに感動を届けられるよう、ぜひ最後までお読みください。
結婚式ムービーで知るべき「2つの権利」
音楽には、その創作活動を保護し、正当な対価を得るための「著作権」という権利が存在します。結婚式のオープニングムービーで市販の楽曲を使用する際には、主に2つの権利について理解しておく必要があります。
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著作権とは?(作詞・作曲家が持つ権利)
著作権とは、作詞家や作曲家など、楽曲を創作した人が持つ権利です。 これは、作品が創作された時点で自動的に発生し、著作者の死後70年間保護されます。 著作権には、楽曲を演奏する「演奏権」や、複製する「複製権」など、さまざまな支分権が含まれています。
著作隣接権とは?(歌手・演奏家・レコード会社が持つ権利)
著作隣接権とは、作詞・作曲家とは別に、その楽曲を世に広める役割を担う人々に与えられる権利です。具体的には、歌手や演奏家(実演家)、そしてCDなどの音源を制作したレコード会社(レコード製作者)が持ちます。 市販のCD音源をムービーに使用する場合、この著作隣接権の許諾も必要になります。

著作権と著作隣接権は、それぞれ異なる権利者が持つため、市販の楽曲をムービーに使う場合は、両方の権利者から許諾を得る必要があることを覚えておきましょう。
結婚式ムービーにおける音楽利用の具体的なルール
結婚式で音楽を利用する際には、その利用方法によって必要な手続きが異なります。特にオープニングムービーのような映像に音楽を組み込む場合は、「複製権」の処理が非常に重要になります。
演奏権:会場BGMの場合
結婚式場でBGMとして市販のCDを流したり、生演奏を行ったりする際に発生するのが「演奏権」です。
多くの結婚式場は、日本音楽著作権協会(JASRAC)などの著作権管理団体と「包括契約」を結んでいます。 この契約により、式場側がJASRAC管理楽曲の演奏権に関する手続きを代行してくれるため、新郎新婦が個別に申請する必要がない場合がほとんどです。
ただし、式場が包括契約を結んでいない場合や、JASRACが管理していない楽曲を使用したい場合は、別途手続きが必要になることがあります。使用したい楽曲がJASRAC管理楽曲かどうかは、JASRACの作品検索データベース「J-WID」で確認できます。
複製権:オープニングムービーの場合(最も重要!)
オープニングムービーやプロフィールムービー、エンドロールなど、映像に市販の楽曲を組み込む行為は、楽曲を「複製」することにあたります。 この「複製権」の処理が、結婚式ムービー制作において最も注意すべき点です。
なぜ複製権が必要か
CDやダウンロードした音源をそのまま流すだけであれば演奏権の問題が主ですが、ムービーにBGMとして組み込む場合、音源をコピーし、映像と同期させるために編集する行為が発生します。この「コピー」や「編集」が複製にあたるため、著作権者(作詞・作曲家)と著作隣接権者(レコード会社など)の両方から複製許諾を得る必要があるのです。
ISUM(アイサム)とは?その役割と仕組み
結婚式ムービーにおける複製権の処理をスムーズにするために設立されたのが、「一般社団法人 音楽特定利用促進機構(ISUM:アイサム)」です。
ISUMは、ブライダルコンテンツに特化し、JASRACなどの著作権管理事業者や日本レコード協会などから、楽曲の複製利用に関する許諾をまとめて代行しています。
ISUMを利用することで、通常は個別に申請が必要な著作権と著作隣接権の手続きを一括で行うことができ、新郎新婦や制作会社の負担を大幅に軽減できます。
**ISUMでできること・できないこと**
* **できること:** 結婚式や披露宴等のウェディングシーンで、市販音源を複製利用する際の著作権・著作隣接権の利用手続きを代行します。具体的には、BGM用CDの作成、プロフィールムービーやエンドロールへの楽曲収録、記録映像へのBGM収録などが含まれます。
* **できないこと:** 結婚式や披露宴以外の利用、SNSへのアップロード、ISUM楽曲データベースに登録されていない楽曲の申請は代行対象外です。
**ISUM利用のメリット**
* **手続きの一元化:** 著作権と著作隣接権の両方をまとめて申請できるため、手間が省けます。
* **安心の正規許諾:** ISUMを通じて申請が通ると「正規許諾証明」が発行され、適正な権利処理が行われたことを証明できます。
* **トラブル回避:** 著作権侵害のリスクを回避し、安心してムービーを上映できます。
**ISUM利用の注意点(個人申請不可、事業者経由)**
ISUMへの申請は、原則として個人単位では受け付けていません。 結婚式場や映像制作会社など、ISUMと契約している事業者を通じて申請する必要があります。 自作ムービーの場合でも、式場や制作会社に相談し、ISUMを通じて申請してもらうのが一般的です。

ISUMの楽曲データベースに登録されている楽曲は9000曲以上あり、結婚式で人気の曲も多数含まれています。まずは使いたい曲がISUMに登録されているか確認しましょう。
ISUMにない楽曲の場合の対応
もし使用したい楽曲がISUMのデータベースにない場合、個別に権利者へ許諾申請を行う必要があります。これは、著作権者(JASRACまたはNexTone)と著作隣接権者(日本レコード協会または各レコード会社)の両方に直接連絡を取り、許可を得るという非常に手間のかかる作業になります。
特に、インターネット上のストリーミングサービス(サブスクリプションサービス)で配信されている音源や、YouTubeなどの動画サイトからダウンロードした音源は、個人的な視聴を目的としたものであり、結婚式ムービーへの複製利用は認められていません。 正規に購入したダウンロード音源であっても、ISUMに登録されていない場合は利用できないケースが多いので注意が必要です。
著作権フリー・ライセンス音楽の活用術
市販の楽曲の著作権処理が難しいと感じる場合や、費用を抑えたい場合は、著作権フリーまたはライセンス音楽の活用が有効な選択肢となります。
著作権フリー音楽とは?
著作権フリー音楽とは、著作権者が権利を放棄しているか、最初から著作権が存在しない音楽のことです。 これらの音楽は、基本的に自由に使用できますが、サイトによっては商用利用や改変に制限がある場合があるため、必ず利用規約を確認することが重要です。
ライセンス音楽(ロイヤリティフリー)とは?
ライセンス音楽、またはロイヤリティフリー音楽とは、一度ライセンス料を支払えば、その後は追加料金なしで何度でも使用できる音楽のことです。 多くの場合は商用利用や改変も許可されており、結婚式のオープニングムービーにも適しています。
信頼できる音楽素材サイトの紹介
著作権フリーやライセンス音楽を探すなら、信頼できる音楽素材サイトの利用が便利です。
サイト名 | 特徴 | 料金体系 |
---|---|---|
Bensound | 幅広いジャンルの楽曲を提供。シンプルで使いやすい。 | 無料(クレジット表記必須)/ 有料ライセンス |
Epidemic Sound | 高品質な楽曲が豊富。YouTubeクリエイターにも人気。 | 有料(サブスクリプション) |
Audiostock | 日本の大手素材サイト。プロの作曲家による高品質な楽曲が多数。 | 有料(1曲ごとの購入、定額プランあり) |
HURT RECORD | 無料の著作権フリーBGMサイト。様々なテーマの楽曲がある。 | 無料(利用規約あり) |
DOVA-SYNDROME | 無料の著作権フリーBGMサイト。幅広いジャンルと多数の楽曲。 | 無料(利用規約あり) |
SHW | オーケストラや和風の楽曲が特徴。個人運営で数は少なめ。 | 無料(利用規約あり) |
利用規約の確認ポイント
著作権フリーやライセンス音楽を利用する際も、以下の点に注意して利用規約を必ず確認しましょう。
* **商用利用の可否:** 結婚式での利用は商用利用とみなされるため、商用利用が許可されているか。
* **クレジット表記の要否:** 楽曲の利用時に、作者名の表記が必要か。
* **改変の可否:** 楽曲の長さを調整したり、一部を切り取ったりするなどの改変が許可されているか。
* **再配布の禁止:** 取得した楽曲を第三者に提供したり、販売したりすることが禁止されていないか。

「著作権フリー」と謳われていても、完全に自由に使えるわけではありません。必ず各サイトの利用規約を熟読し、結婚式での利用目的に合致しているかを確認することが、トラブルを避けるための第一歩です。
著作権侵害を避けるための具体的な対策と注意点
著作権侵害は、意図せずとも発生してしまう可能性があります。大切な結婚式を台無しにしないためにも、具体的な対策と注意点を押さえておきましょう。
プロの制作会社に依頼するメリット
結婚式のオープニングムービー制作をプロの業者に依頼する場合、著作権に関する手続きを代行してくれるケースがほとんどです。
多くの制作会社はISUMに登録しており、使用したい楽曲がISUMデータベースにあれば、複製権の申請をスムーズに行ってくれます。 これにより、新郎新婦は著作権に関する複雑な手続きに煩わされることなく、安心してムービー制作を進めることができます。
ただし、依頼する前に、必ず著作権処理についてどこまで対応してくれるのか、追加料金が発生するのかなどを確認しておくことが重要です。
自作する場合のチェックリスト
自作ムービーの場合、すべての著作権処理を自分たちで行う必要があります。以下のチェックリストを参考に、漏れがないか確認しましょう。
- 使用したい楽曲がISUMに登録されているか確認したか?
- ISUMに登録されている場合、式場や提携の制作会社を通じて申請できるか確認したか?
- ISUMに登録されていない場合、著作権者(JASRAC/NexTone)と著作隣接権者(日本レコード協会/レコード会社)に個別に許諾申請を行う準備があるか?
- 著作権フリーまたはライセンス音楽を使用する場合、利用規約をすべて確認し、結婚式での利用が許可されているか確認したか?
- サブスクリプションサービスやYouTubeなどからダウンロードした音源を使用していないか?

自作ムービーで市販曲を使いたい場合は、まず式場に相談しましょう。式場がISUMに登録していれば、自作ムービーであっても式場経由で申請できる場合があります。
音楽以外の著作物(映像、写真、キャラクター)にも注意
著作権は音楽だけでなく、映像、写真、イラスト、キャラクターなど、あらゆる創作物に適用されます。
映画のワンシーンやテレビ番組の映像、アニメのキャラクター、インターネット上の画像などを無断でムービーに使用することは、著作権侵害にあたります。 また、他人の写真を使用する際は、肖像権やプライバシー権にも配慮し、必ず本人の許可を得るようにしましょう。
著作権侵害が発覚した場合の対処
万が一、著作権侵害が発覚した場合、以下のような事態が起こり得ます。
* **ムービーの上映中止:** 結婚式当日に、制作したムービーの上映を式場から断られる可能性があります。
* **損害賠償請求:** 権利者から損害賠償を請求されることがあります。
* **刑事罰:** 悪質な場合は、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられる可能性があります。
おめでたい結婚式でこのようなトラブルを避けるためにも、事前の確認と適切な手続きが何よりも重要です。
最新の著作権法とブライダル業界の動向
著作権法は、社会の変化に合わせて改正されることがあります。特にデジタルコンテンツの利用が広がる現代において、その動向を把握しておくことは重要です。
現行の著作権法の概要
日本の著作権法は、著作者の権利を保護し、文化の発展に寄与することを目的としています。音楽の著作権は、創作と同時に発生し、著作者の死後70年間保護されます。 この期間内は、権利者の許諾なしに著作物を利用することはできません。
デジタルコンテンツ保護の強化
近年、インターネット上でのデジタルコンテンツの流通が活発化しているため、著作権法もこれに対応する形で改正が進んでいます。特に、違法ダウンロードの規制強化や、著作権侵害コンテンツへのアクセスを助長する行為への対策などが挙げられます。結婚式ムービーにおいても、安易なインターネットからの音源利用はリスクが高いことを認識しておくべきです。
国際的な動向と日本のブライダル業界
著作権に関する国際的な条約や各国の法律も、日本の著作権運用に影響を与えます。特に海外の楽曲を使用する際は、日本の著作権法だけでなく、その国の法律や国際的な取り決めも考慮に入れる必要があります。
日本のブライダル業界では、ISUMのような団体が設立され、著作権処理の仕組みが整備されてきています。これは、新郎新婦が安心して市販楽曲を利用できる環境を整えるための重要な動きと言えるでしょう。
まとめとよくある質問
結婚式のオープニングムービーは、お二人の大切な思い出をゲストと分かち合う感動的な演出です。著作権に関する正しい知識と適切な手続きを行うことで、安心して最高のムービーを完成させることができます。
まとめ:安心して感動的なムービーを作るために
結婚式のオープニングムービーで市販の楽曲を使用する際は、会場でのBGM利用に関わる「演奏権」と、ムービーに楽曲を組み込む「複製権」の2つの権利に注意が必要です。特に複製権については、ISUM(一般社団法人 音楽特定利用促進機構)を通じて、結婚式場や映像制作会社に申請を代行してもらうのが最も確実でスムーズな方法です。ISUMにない楽曲や、費用を抑えたい場合は、著作権フリーやライセンス音楽の活用も検討しましょう。その際も、必ず利用規約を確認し、商用利用や改変の可否をチェックすることが重要です。
何よりも、無許可での楽曲利用は著作権侵害にあたり、法的な問題やムービーの上映中止といったトラブルにつながる可能性があることを理解し、事前の準備と確認を怠らないようにしましょう。


よくある質問とその回答
**Q1: ISUMにない曲を使いたい場合はどうすれば良いですか?**
A: ISUMに登録されていない楽曲を使用したい場合、著作権者(JASRACまたはNexTone)と著作隣接権者(日本レコード協会または各レコード会社)に個別に許諾申請を行う必要があります。これは非常に手間がかかるため、プロの制作会社に相談するか、別の楽曲を検討することをおすすめします。
**Q2: 自作ムービーでもISUMは使えますか?**
A: ISUMは個人からの直接申請を受け付けていません。 しかし、結婚式場やISUMと契約している映像制作会社を通じてであれば、自作ムービーでもISUMを利用して楽曲の複製許諾を得られる場合があります。まずは、利用する式場の担当者や、ムービー制作をサポートしてくれる業者に相談してみましょう。
**Q3: 著作権フリーの音楽を使用する場合でも、何か注意点はありますか?**
A: はい、著作権フリーの音楽でも、サイトごとに異なる利用規約が定められています。 特に「商用利用の可否」「クレジット表記の要否」「改変の可否」は必ず確認してください。結婚式での利用は商用利用とみなされることが多いため、これらの条件を満たしているかどうかが重要です。
**Q4: 著作権侵害の罰則は?**
A: 著作権侵害は、民事上の損害賠償請求の対象となるだけでなく、刑事罰が科せられる可能性もあります。具体的には、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられることがあります。 また、結婚式当日にムービーの上映を拒否されるなど、おめでたい日にトラブルが発生するリスクもあります。