かつてWindowsユーザーにとって身近な動画編集ソフトだった「Windows ムービーメーカー」。結婚式のプロフィールムービーやオープニングムービーを自作する際にも、その手軽さから多くの新郎新婦に利用されてきました。そして、現代の動画ファイルの主流であるMP4形式での出力は、ムービーメーカーにおいても重要な機能でした。
しかし、時代は移り変わり、ムービーメーカーはすでに公式サポートを終了しています。では、今、結婚式ムービーを最高の品質でMP4出力するにはどうすれば良いのでしょうか?
この記事では、まずムービーメーカーの現状と、もしお持ちであればMP4で出力する基本的な手順を解説します。その上で、なぜMP4形式が結婚式ムービーに最適なのかを深掘りし、ムービーメーカーに代わる現代の動画編集ソフトと、高画質なMP4動画を出力するための具体的な設定方法まで、プロの視点から網羅的にご紹介します。お二人の大切な日を彩るムービーを、最高の形でゲストに届けましょう。
Windowsムービーメーカーの現状と、なぜ今使うべきではないのか
まず、重要な事実として、Windowsムービーメーカーは2017年1月10日にマイクロソフトによる配布とサポートが終了しています。現在、公式にダウンロードすることはできません。もし「ムービーメーカーをダウンロードできる」と謳うサイトを見つけても、ウイルスやスパムウェアが仕込まれている可能性が非常に高いため、絶対にダウンロードしないように注意してください。
Windowsムービーメーカーは、Windows XPやVista時代には標準搭載され、Windows 7以降はWindows Essentialsの一部として提供されていましたが、現在はその役目を終えています。Windows 10以降では、「フォト」アプリ内のビデオエディターや、Windows 11ではMicrosoft Clipchampがその役割を担っています。
しかし、もし古いPCにムービーメーカーがインストールされており、引き続き利用したいという方のために、MP4形式で動画を出力する基本的な手順を解説します。この手順は、過去のバージョンでも共通して利用できるものです。
動画テンプレートなら編集も簡単
無料でも使えるのに、使わないのはもったいないかも。今すぐダウンロード。
MP4ムービーの保存メニューを開く
ムービーメーカーで編集した動画をMP4形式で出力するには、「ホーム」タブにある「ムービーの保存」から、動画保存用のメニューへ進みます。
出力動画のプリセットを選択する
次に、出力する動画の解像度(サイズ)やビットレート(データ量)を設定します。ムービーメーカーにはいくつかのプリセットが用意されており、ここから選ぶのが最も簡単です。例えば、「高解像度ディスプレイ用」などのプリセットを選択しましょう。「カスタム設定の作成」から詳細な設定も可能ですが、まずはプリセットの利用をおすすめします。
動画形式をMP4に指定する
「ファイルの種類の項目」をクリックして表示されるプルダウンメニューから、出力する動画のファイル形式を選択します。ここで「MPEG-4/H.264 ビデオファイル(*.mp4)」を選択してください。「Windows Media ビデオファイル(*.wmv)」も選択肢にありますが、MP4形式ではないため注意が必要です。
保存場所とファイル名を指定する
同じ画面から保存場所の指定ができます。デフォルトではWindowsの「ピクチャ」フォルダに保存されますが、デスクトップなど分かりやすい場所を指定しておくと良いでしょう。ファイル名も後で管理しやすいように、具体的な名前を付けて保存することをおすすめします。
出力の実行と確認
「保存」ボタンを押すと、動画の出力が開始されます。
出力が完了したら、指定した保存場所にあるMP4ファイルをダブルクリックして再生し、正常に完了したことを確認しましょう。このMP4データは、通常の動画ファイルとして再生できるほか、YouTubeなどへのアップロードも可能です。

ムービーメーカーで作成したプロジェクトファイル(.wlmp)は、動画ファイルそのものではありません。動画として再生するには、必ず「ムービーの保存」からMP4などの動画形式で出力する必要があります。
結婚式ムービーにMP4形式が最適な理由
ムービーメーカーの時代から現在に至るまで、MP4形式は動画ファイルのデファクトスタンダードとして広く普及しています。結婚式ムービーにおいても、MP4形式は多くのメリットをもたらします。
- 普遍的な互換性:MP4は、Windows、Mac、スマートフォン(iPhone/Android)、タブレット、スマートテレビ、Webブラウザなど、ほとんど全てのデバイスやプラットフォームで再生可能です。結婚式場で使用するプロジェクターやPCでも、MP4であれば再生トラブルのリスクを大幅に減らせます。
- 高圧縮率と高画質の両立:MP4は、H.264(またはH.265)という効率的な動画圧縮技術(コーデック)を使用しており、ファイルサイズを抑えつつも高い画質を維持できます。これにより、オンラインでの共有や、USBメモリでの持ち運びが容易になります。
- Webサービスとの親和性:YouTube、Vimeo、SNSなど、ほとんどの動画共有サービスがMP4形式を推奨または標準としています。結婚式ムービーをゲストと共有したり、後日オンラインで公開したりする際に非常に便利です。
これらの理由から、結婚式ムービーの最終出力形式としてMP4を選択することは、現代において最も賢明な選択と言えるでしょう。
ムービーメーカーに代わる現代の動画編集ソフトとMP4出力
ムービーメーカーが提供終了となった今、結婚式ムービーを自作するには、現代の動画編集ソフトを利用する必要があります。これらのソフトは、ムービーメーカーにはなかった高度な機能や、より柔軟なMP4出力設定を提供しています。
無料で始められる動画編集ソフト
手軽に始めたい方や、シンプルな編集で十分な場合は、無料ソフトから試してみるのがおすすめです。
ソフト名 | 特徴 | MP4出力 |
---|---|---|
Windows標準「フォト」アプリ(ビデオエディター) | Windows 10/11に標準搭載。簡単なカット、BGM、テキスト追加が可能で、初心者でも直感的に操作できます。 | MP4形式で出力可能。 |
OpenShot | Windows, Mac, Linux対応のオープンソースソフト。基本的な編集機能に加え、豊富なエフェクトやトランジションも利用できます。 | MP4を含む多様な形式で出力可能。 |
Shotcut | OpenShotと同様にマルチプラットフォーム対応の無料ソフト。プロフェッショナルな編集機能も備え、高度な設定が可能です。 | MP4を含む多様な形式で出力可能。 |
DaVinci Resolve | ハリウッド映画でも使われるプロ仕様の無料版。高機能で学習コストは高いですが、非常に高品質な動画を作成できます。 | MP4を含む多様な形式で出力可能。 |
VideoProc Vlogger | 完全に無料で、ロゴや時間制限なし。豊富なトランジションやエフェクト、高度なカラー補正機能も備え、初心者でも高品質なムービー作成が可能です。 | MP4を含む多様な形式で出力可能。 |
Canva | オンラインで手軽に動画作成が可能。豊富なテンプレートと直感的な操作で、デザイン性の高いムービーが作れます。 | MP4形式で出力可能。 |
より高度な編集を目指す有料動画編集ソフト
より高品質なムービーを目指したい方や、豊富なテンプレート、サポートを求める方には有料ソフトが適しています。
ソフト名 | 特徴 | MP4出力 |
---|---|---|
PowerDirector | 国内シェアNo.1の定番ソフト。直感的な操作性と豊富な機能で、初心者から上級者まで幅広く支持されています。結婚式ムービー用のテンプレートも充実。 | 高画質なMP4(H.264/H.265)出力に対応。 |
Filmora | Wondershare社が提供する、おしゃれなエフェクトやテンプレートが豊富なソフト。SNS向けの動画作成にも強く、手軽にプロ並みの仕上がりを目指せます。 | MP4を含む多様な形式で出力可能。 |
Adobe Premiere Pro | 業界標準のプロフェッショナル向けソフト。高度な編集機能と連携性で、こだわり抜いた結婚式ムービーを作成できます。 | 詳細な設定でMP4(H.264/H.265)出力が可能。 |

ソフト選びは、ご自身の動画編集スキル、作成したいムービーのクオリティ、そして予算によって大きく変わります。まずは無料ソフトで試してみて、物足りなさを感じたら有料ソフトへの移行を検討するのがおすすめです。
結婚式ムービーをMP4で高画質出力するための重要設定
動画編集ソフトでMP4形式で出力する際、いくつかの設定項目を適切に調整することで、画質とファイルサイズのバランスを最適化し、結婚式ムービーを最高の状態で上映・共有できます。特に以下の点に注目しましょう。
1. 解像度とフレームレート
- 解像度(Resolution):動画の縦横のピクセル数です。
- Full HD (1920×1080):現在の主流であり、ほとんどの式場のプロジェクターやテレビで問題なく再生できる高画質です。
- 4K (3840×2160):より高精細な映像ですが、ファイルサイズが大きくなり、再生環境を選ぶ場合があります。式場に4K対応の設備があるか事前に確認が必要です。
- フレームレート(Frame Rate):1秒あたりのコマ数です。
- 30fps:一般的な動画のフレームレートで、滑らかさも十分です。
- 60fps:より動きの滑らかな映像になりますが、ファイルサイズが大きくなります。動きの多い映像(ダンスなど)に適しています。
2. ビットレート
ビットレートは、1秒あたりのデータ量を示す数値で、画質とファイルサイズに直結します。数値が高いほど高画質になりますが、ファイルサイズも大きくなります。
結婚式ムービーの場合、Full HD (1920×1080) であれば、映像ビットレートは10~20Mbps程度を目安にすると良いでしょう。動きの少ないプロフィールムービーであれば低め、動きの多いオープニングやエンドロールであれば高めに設定するなど、内容に応じて調整してください。YouTube向けであれば、1080pで8~12Mbps、4Kで35~45Mbpsが推奨されています。
3. アスペクト比とセーフエリア
- アスペクト比:動画の縦横比です。現在の主流は「16:9」(ワイドスクリーン)です。式場のプロジェクターやスクリーンが16:9に対応しているか、事前に確認することが非常に重要です。古い設備の場合、4:3(スタンダード)が推奨されることもあります。
- セーフエリア:プロジェクターやテレビで表示される際に、画面の端が切れてしまわないように、映像の上下左右に余白を設けることです。特に文字や顔など重要な要素は、画面の端から20%程度内側に配置する「セーフエリア」を意識して作成しましょう。
4. 音声設定
音声コーデックは「AAC」が一般的で、MP4ファイルに埋め込まれます。ビットレートは128kbps~192kbps程度で十分な音質が得られます。
5. 出力前の最終確認と式場での試写
動画を出力したら、必ず以下の点を確認しましょう。
- 再生確認:PCやスマートフォンなど、複数のデバイスで再生し、映像や音声に乱れがないか確認します。
- ファイルサイズ:式場への持ち込み方法(USBメモリ、クラウドなど)や、共有方法に適したファイルサイズになっているか確認します。
- 式場での試写:最も重要です