After Effectsで動画やアニメーションを制作する際、特定のシーンを逆再生させたい、あるいはループアニメーションに組み込みたいと考えることは少なくありません。After Effectsには、レイヤーを逆再生するための複数の機能が用意されており、それぞれに異なる特徴と最適な使用シーンがあります。このガイドでは、初心者の方から経験者の方まで、After Effectsでレイヤーを逆再生するためのあらゆる方法を網羅的に解説します。それぞれの機能の基本的な使い方から、実践的なループアニメーションの作成、さらにはプロが活用する応用テクニックまで、あなたの動画制作の幅を広げるための情報をお届けします。
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レイヤーの調整と操作
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After Effectsでレイヤーを逆再生する主な4つの方法の概要
After Effectsでレイヤーを逆再生する方法は、主に以下の4つが挙げられます。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、目的や状況に応じて使い分けることが重要です。まずは、各機能の概要を表で確認しましょう。
方法 | 特徴 | 最適な使用シーン |
---|---|---|
時間反転レイヤー | レイヤー全体をシンプルに逆再生。キーフレームも同時に反転。 | 動画素材やシンプルなアニメーション全体を素早く逆再生したい場合。 |
時間伸縮 | レイヤーの再生速度を柔軟に調整。-100%で逆再生も可能。 | 逆再生だけでなく、早送りやスローモーションも頻繁に使う場合。 |
時間反転キーフレーム | 特定のキーフレームアニメーションのみを逆再生。レイヤーの再生時間はそのまま。 | レイヤー全体の時間軸に影響を与えず、部分的なアニメーションだけを反転したい場合。 |
タイムリマップ | 映像の時間をキーフレームで細かく制御。自由自在な速度変化、逆再生、フリーズフレームを実現。 | 映像にドラマチックな緩急をつけたり、複雑なループアニメーションを作成したりする場合。 |
これらの方法を理解することで、After Effectsでの時間操作のスキルが飛躍的に向上します。それぞれの機能の基本から、さらに詳しく見ていきましょう。

After Effectsの逆再生機能は、単に映像を巻き戻すだけでなく、クリエイティブな演出の幅を大きく広げてくれます。目的に応じて最適な方法を選ぶことが、効率的で高品質な動画制作の鍵ですよ。
方法1: 最もシンプル!「時間反転レイヤー」
「時間反転レイヤー」は、After Effectsでレイヤー全体を最も手軽に逆再生できる機能です。動画素材はもちろん、キーフレームアニメーションが適用されたレイヤーもまとめて反転させることができます。シンプルながらも非常に汎用性が高く、多くのシーンで活躍します。
「時間反転レイヤー」の機能と特徴
- レイヤー全体を反転: 選択したレイヤーのインポイントとアウトポイントが入れ替わり、再生方向が逆になります。これは、クリップの開始点と終了点が時間的に反転することを意味します。
- キーフレームも同時に反転: レイヤーに設定された全てのキーフレームも、その時間的な位置が反転されます。これにより、アニメーションも逆方向に再生されます。
- シンプルな操作: メニューから選択するだけで適用できるため、手軽に逆再生を実現したい場合に最適です。
「時間反転レイヤー」の適用手順
時間反転レイヤーは、以下のいずれかの方法で適用できます。
- 逆再生したいレイヤーを選択します。
- 上部メニューの「レイヤー」>「時間」>「時間反転レイヤー」を選択します。
または、
- 逆再生したいレイヤーを右クリックします。
- コンテキストメニューから「時間」>「時間反転レイヤー」を選択します。
インポイントとアウトポイントが入れ替わります
時間反転レイヤーを適用すると、レイヤーのインポイントとアウトポイントと呼ばれる「端」の部分が前後で入れ替わります。キーフレームが挿入されていたレイヤーの場合はキーフレームもまとめて反転されます。
時間反転レイヤーの見分け方
時間反転レイヤーを適用したレイヤーは、レイヤーバーの下部に斜線が追加されます。 (斜線の色はAfter Effectsのバージョンで異なる場合があります。)この斜線が表示されていれば、そのレイヤーは逆再生設定になっていることを示します。
時間反転レイヤーを解除する場合
時間反転レイヤーを解除するには、適用時と全く同じ手順で操作します。レイヤーを選択し、「レイヤー」>「時間」>「時間反転レイヤー」を再度選択するか、右クリックメニューから解除します。

時間反転レイヤーは、レイヤー全体をシンプルに逆再生したい場合に非常に便利です。特に、複雑なキーフレーム調整が不要なシーンや、手軽にループ素材を作りたい場合に活躍します。
方法2: 速度調整も自在「時間伸縮」
「時間伸縮」機能は、レイヤーの再生速度を調整するための強力なツールです。この機能を使って、レイヤーを早送りしたり、スローモーションにしたりするだけでなく、逆再生させることも可能です。
「時間伸縮」の機能と特徴
- 再生速度の柔軟な調整: レイヤーのデュレーション(長さ)を数値で指定したり、伸縮比率(パーセンテージ)で調整したりできます。100%が通常の速度で、小さい値で早送り、大きい値でスロー再生となります。
- 逆再生も可能: 伸縮比率に「-100%」と入力することで、レイヤーを逆再生させることができます。
- 基準点の選択: レイヤーの伸縮を開始する基準点(インポイント、現在の時間インジケーター、アウトポイント)を選択できます。
「時間伸縮」の適用手順
- 逆再生したいレイヤーを選択します。
- 上部メニューの「レイヤー」>「時間」>「時間伸縮」を選択します。
- 表示されるダイアログボックスで、「伸縮比率」に「-100%」と入力します。
- 「OK」をクリックして適用します。
スローモーション時の「フレームブレンド」の活用
「時間伸縮」でスローモーションを適用した場合、元のフッテージのフレームレートが低いと、動きがぎこちなく見えることがあります。これを解消するために、「フレームブレンド」機能を活用しましょう。
- フレームミックス: 隣接するフレームの間に新しいフレームを挿入し、平均値を取ることで滑らかな動きを生成します。
- ピクセルモーション: フレーム間のピクセルの動きを解析し、高度な補間によって非常にスムーズなスローモーションを生成します。計算に時間がかかる場合がありますが、高品質な結果が得られます。
適用するには、対象のクリップを右クリックし、「フレームブレンド」から「フレームミックス」または「ピクセルモーション」を選択します。

時間伸縮は、レイヤー全体の速度を調整したい場合に非常に有効です。特に、逆再生だけでなく、早送りやスローモーションも頻繁に使うなら、この機能をマスターしておくと便利ですよ。低フレームレートの素材をスローにする際は、必ずフレームブレンドを試してみてください。
方法3: アニメーションだけを反転「時間反転キーフレーム」
「時間反転キーフレーム」は、レイヤー全体の再生方向を変えるのではなく、特定のプロパティに設定されたキーフレームアニメーションのみを逆再生したい場合に役立つ機能です。
「時間反転キーフレーム」の機能と特徴
- 選択したキーフレームのみに適用: レイヤー上の特定のプロパティ(例: 位置、スケール、不透明度など)に設定されたキーフレームを選択し、それらだけを反転させることができます。
- レイヤーの再生時間はそのまま: レイヤー自体のインポイントやアウトポイント、全体の再生方向は変わりません。アニメーションの動きだけが逆になります。
- 複雑なアニメーションの調整に: 例えば、オブジェクトが画面に入ってくるアニメーションを逆再生して画面から出ていくようにしたいが、そのレイヤーの他の部分(例えば背景動画)はそのまま再生したい、といった場合に有効です。
「時間反転キーフレーム」の適用手順
- 逆再生したいキーフレームが設定されているレイヤーを選択し、プロパティを展開してキーフレームを表示させます。
- 逆再生したいキーフレームを全て選択します。
- 選択したキーフレーム上で右クリックし、「キーフレーム補助」>「時間反転キーフレーム」を選択します。
これにより、選択したキーフレームの並びが反転し、アニメーションが逆方向に再生されるようになります。
After Effects 2024からは、キーフレームをコピーする際に「反転したキーフレームをペースト」という新機能も追加されました。これにより、アニメーションの順番も含めて反転ペーストが可能になり、より高度なリバースアニメーション作成が効率化されています。

時間反転キーフレームは、レイヤー全体の時間軸に影響を与えずに、特定のアニメーションだけを効率的に逆再生したい場合に重宝します。特に、複雑なコンポジションで作業する際に、意図しない影響を避けることができます。
方法4: 自由自在な時間制御「タイムリマップ」
「タイムリマップ」は、After Effectsにおける時間操作の最も強力で柔軟な機能です。映像の再生速度や方向をキーフレームを使って自在に制御できるため、スローモーション、早送り、逆再生、フリーズフレームなど、あらゆる時間効果を一つのクリップ内で実現できます。
「タイムリマップ」の機能と特徴
- キーフレームによる詳細制御: タイムライン上にキーフレームを追加し、そのキーフレーム間の時間を調整することで、映像の速度を細かく制御できます。
- 多様な時間効果: スローモーション、早送り、逆再生、特定のフレームでの静止(フリーズフレーム)など、幅広い表現が可能です。
- エクスプレッションとの連携: エクスプレッション(特に
loopOut
)と組み合わせることで、シームレスなループアニメーションや複雑な時間変化を自動化できます。 - グラフエディターでの微調整: グラフエディターを使用することで、速度変化のカーブを視覚的に調整し、より滑らかなアニメーションを実現できます。
「タイムリマップ」の適用手順
- 時間調整したいレイヤーを選択します。
- 上部メニューの「レイヤー」>「時間」>「タイムリマップ使用可能」を選択します。
- レイヤーのタイムラインに「タイムリマップ」プロパティが表示され、開始と終了の2つのキーフレームが自動的に追加されます。
- 時間調整したい位置にキーフレームを追加し(Ctrl/Cmd + Alt + T)、キーフレーム間の距離を調整することで速度を変更します。
- キーフレーム間の距離を広げる → その部分がスローになります。
- キーフレーム間の距離を縮める → その部分が速くなります。
- 逆再生にするには、キーフレームの値を逆転させます(例: 0秒のキーフレームの値を2秒のキーフレームにコピーし、2秒のキーフレームの値を0秒のキーフレームにコピーするなど)。

タイムリマップは、After Effectsのプロフェッショナルな現場で頻繁に活用される機能です。特に、映像にドラマチックな緩急をつけたり、ユニークな時間演出を加えたい場合には、この機能を使いこなすことが必須となります。最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れると表現の幅が格段に広がりますよ。
実践!逆再生を活用したループアニメーションの作成
After Effectsで逆再生機能を活用する代表的な例の一つが、ループアニメーションの作成です。ここでは、「時間反転レイヤー」を使ったシンプルなループと、「タイムリマップ」とエクスプレッションを使ったより高度なループ作成方法をご紹介します。
6.1. 「時間反転レイヤー」を利用したシンプルなループ素材の作成
時間反転レイヤーを利用すると、再生と逆再生を繰り返すだけのシンプルなループ素材を簡単に作成できます。これは、背景アニメーションや装飾的な要素など、複雑な動きが不要な場合に特に有効です。
1. キーフレームを打ったレイヤーを用意します
ここでは、周囲から星形のシェイプレイヤーが画面内に入り込んでくるアニメーションを作成しています。ヌルレイヤーと親子関係を結んで、全体が回転するアニメーションも加えています。このレイヤーを逆再生したレイヤーと組み合わせてシンプルなループを作成します。
2. レイヤーを複製します
キーフレームを打ってあるシェイプレイヤーを複製します。(Ctrl/Cmd + D)
3. 複製したレイヤーに時間反転レイヤーを適用します
複製して出来たレイヤーに時間反転レイヤーを適用します。アウトポイントとインポイントが入れ替わったので、これらをつなげればシンプルなループが作成できるという訳です。
4. 複製したレイヤーをつなげます
複製して時間反転レイヤーを適用したレイヤーのインポイント(反転前のアウトポイント)を、逆再生していないレイヤーのアウトポイントとつなげます。[Shift]キーを押しながらドラッグすると、レイヤーのアウトポイントとぴったり吸着させることが出来ます。
プレビュー
再生と逆再生を繰り返すだけのシンプルなループですが、作成する事が出来ました。再生速度と位置を少し調整しています。
