Premiere Pro(プレミアプロ)の「マーカー」機能は、動画編集の効率を飛躍的に向上させる強力なツールです。タイムライン上に目印を付け、編集ポイントの整理、情報共有、特定のイベントの記録など、多岐にわたる用途で活用できます。特に、複数のクリップを扱う長尺のプロジェクトや、チームでの共同作業においては、シーケンスマーカーの存在がスムーズなワークフローを実現する鍵となります。
このガイドでは、Premiere Proのシーケンスマーカーの基本的な使い方から、その応用、そしてプロの現場で役立つ実践的な活用術までを網羅的に解説します。マーカーを使いこなすことで、あなたの動画編集はさらに洗練され、ストレスフリーなものになるでしょう。
Premiere Proマーカー機能の基礎知識:シーケンスとクリップの違い
Premiere Proのマーカーには、大きく分けて「シーケンスマーカー」と「クリップマーカー」の2種類があります。それぞれの特性を理解することが、効果的なマーカー活用の第一歩です。
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シーケンスマーカーとは?
シーケンスマーカーは、タイムライン全体(シーケンス)に付与されるマーカーです。特定のクリップに紐付かず、タイムライン上の絶対的な時間位置に存在します。例えば、BGMの切り替わり、ナレーションの開始点、重要なシーンの区切りなど、プロジェクト全体の構成やタイミングを管理する際に非常に役立ちます。クリップを移動したり削除したりしても、シーケンスマーカーの位置は変わりません。
クリップマーカーとは?
一方、クリップマーカーは個々のクリップに直接付与されるマーカーです。クリップと共に移動するため、そのクリップ固有のメモや編集点(例:「このテイクはNG」「ここに効果音を入れる」)を記録するのに適しています。ソースモニターで素材をプレビューしながらマーカーを打つことも可能です。
シーケンスマーカーとクリップマーカーは、それぞれ異なる目的で使い分けられます。プロジェクト全体の構成やタイミングに関するメモはシーケンスマーカー、個別の素材に関するメモはクリップマーカーと覚えておくと良いでしょう。

シーケンスマーカーは、まるでタイムライン全体に貼る「付箋」のようなものです。プロジェクトの全体像を把握し、共同作業者との認識を合わせる上で欠かせません。
シーケンスマーカーの基本操作:追加・移動・編集・削除
ここからは、シーケンスマーカーの具体的な操作方法を解説します。基本的な操作をマスターすることで、編集作業の効率が格段に向上します。
マーカーの追加方法
シーケンスにマーカーを追加するには、いくつかの方法があります。最も一般的なのは、再生ヘッドを目的の位置に移動させてから操作する方法です。
- 再生ヘッドを移動する: マーカーを追加したいタイムライン上の位置に再生ヘッド(青い縦線)を移動させます。
- クリップが選択されていないことを確認する: シーケンスマーカーを追加する場合、タイムライン上のどのクリップも選択されていない状態にしてください。もしクリップが選択されていると、クリップマーカーが追加されてしまいます。
- マーカーを追加する:
- ショートカットキー「M」を押す: 最も手軽な方法です。再生ヘッドの位置にコメントマーカーが追加されます。
- タイムラインの時間スケール上で右クリックし「マーカーを追加」を選択する: メニューから明示的に追加できます。
- プログラムモニターまたはタイムラインパネルのマーカーアイコンをクリックする: アイコンから追加することも可能です。
マーカーが追加されると、タイムラインの上部に小さな目印として表示されます。
マーカーの移動とデュレーション設定
追加したマーカーは、ドラッグすることで簡単に位置を調整できます。細かい調整が必要な場合は、タイムラインを拡大するとより正確に操作できます。
また、マーカーには「デュレーション(期間)」を設定することも可能です。特定の範囲を示すマーカーとして活用できます。デュレーションを設定するには、マーカーをダブルクリックして「マーカーの編集」ダイアログを開くか、WindowsではAltキー、MacではOptionキーを押しながらマーカーの端をドラッグします。
マーカーの編集(名前・コメント・色・種類)
マーカーに詳細な情報を付与することで、その利便性は格段に向上します。マーカーをダブルクリックするか、再生ヘッドをマーカーに合わせてMキーを2回押すと、「マーカーの編集」ダイアログが開きます。
このダイアログでは、以下の項目を設定できます。
- 名前: マーカーのタイトルを設定します。タイムライン上でカーソルを合わせると表示されます。
- コメント: マーカーに関する詳細なメモを記入できます。共同作業時の情報共有に特に役立ちます。
- 色: マーカーの色を変更できます。用途に応じて色分けすることで、視覚的に情報を整理しやすくなります。
- 種類: マーカーの種類を選択できます。
- コメントマーカー: 最も一般的なメモ用マーカー。
- チャプターマーカー: DVD/Blu-rayのチャプターポイントやYouTubeのチャプター作成に利用します。
- セグメンテーションマーカー: ビデオの範囲を定義し、ワークフローの自動化などに使用します。
- Webリンクマーカー: 特定のURLを関連付け、書き出し時にWebリンクとして機能させることができます。
- Flashキューポイント: Flashビデオとの連携に使用しますが、現在はあまり使われません。
マーカー間の移動
複数のマーカーがある場合、再生ヘッドを素早く移動させることができます。
- 右クリックメニューから移動: タイムラインの時間スケールを右クリックし、「次のマーカーへ移動」または「前のマーカーへ移動」を選択します。
- ショートカットキーで移動:
- 次のマーカーへ移動: Shift + M
- 前のマーカーへ移動: Ctrl + Shift + M (Windows) / Command + Shift + M (Mac)
マーカーの削除
不要になったマーカーは簡単に削除できます。
- 個別のマーカーを削除: 削除したいマーカーを右クリックし、「選択したマーカーを消去」を選択します。
- すべてのマーカーを削除: タイムラインの時間スケールを右クリックし、「すべてのマーカーを消去」を選択します。
- ショートカットキーで削除:
- 再生ヘッドの位置にあるマーカーを削除: Ctrl + Alt + M (Windows) / Command + Option + M (Mac)
- すべてのマーカーを一括削除: Ctrl + Alt + Shift + M (Windows) / Command + Option + Shift + M (Mac) (クリップが選択されていない状態でシーケンスマーカーを削除)
シーケンスマーカーの応用と実践的な活用術
シーケンスマーカーは、単なる目印以上の可能性を秘めています。ここでは、より高度な活用術をご紹介します。
共同編集での情報共有を円滑に
複数の編集者が一つのプロジェクトに関わる場合、シーケンスマーカーは強力なコミュニケーションツールとなります。
- 修正指示やフィードバックの記録: クライアントからの修正指示や、チームメンバーからのフィードバックをマーカーのコメントとして直接タイムラインに記録できます。これにより、口頭や別のツールでのやり取りに比べて、どの部分に対する指示なのかが明確になり、誤解を防ぎます。
- 作業の引き継ぎ: 担当者が変わる際、マーカーに作業内容や残りのタスクを詳細に記述しておくことで、スムーズな引き継ぎが可能です。
- Frame.ioとの連携: Adobe Creative CloudのFrame.ioを利用している場合、Frame.io上でのコメントや注釈をPremiere Proのマーカーとしてタイムラインに読み込むことができます。これにより、レビューと編集のワークフローがシームレスにつながります。
共同編集では、マーカーの色分けルールを決めておくとさらに便利です。例えば、「赤:緊急修正」「黄:要確認」「緑:完了」など、視覚的に状況を把握しやすくなります。
YouTubeチャプターの作成に活用
YouTube動画にチャプター(目次)を設定する際、シーケンスマーカーが非常に役立ちます。
- チャプターポイントにマーカーを配置: 動画の各セクションの開始点にチャプターマーカーを配置します。
- マーカーに名前を付ける: 各チャプターマーカーに、YouTubeで表示したいチャプター名を記入します。
- 0秒地点にマーカーを配置する: YouTubeのチャプター機能を利用するには、必ず0秒地点に最初のチャプターマーカー(例:「はじめに」)を配置する必要があります。
- マーカー情報を書き出す: タイムラインを選択した状態で、「ファイル」>「書き出し」>「マーカー」を選択し、テキスト形式またはHTML形式で書き出します。
- YouTubeに貼り付け: 書き出したテキストをYouTubeの概要欄に貼り付けることで、自動的にチャプターが生成されます。
この方法を使えば、手動でタイムコードを打ち込む手間が省け、効率的にYouTubeチャプターを作成できます。
音楽や効果音のタイミング合わせ
BGMや効果音を動画に合わせる際、シーケンスマーカーは非常に有効な目印となります。
- 音楽のビートにマーカーを打つ: 音楽の盛り上がりやビートに合わせてマーカーを打っておくことで、映像のカットやトランジションを音楽にシンクロさせやすくなります。
- 効果音の挿入位置をメモ: 特定の映像アクションに効果音を付けたい場合、そのタイミングにマーカーを打って「足音」「パンチ音」などとメモを残しておけば、後から迷うことなく効果音を配置できます。
特に、長尺の動画で複数の音源を扱う場合、マーカーによる視覚的なガイドは編集ミスを防ぎ、作業時間を大幅に短縮します。
リップル編集時のマーカー追従設定
タイムライン上でクリップの削除や挿入を行う「リップル編集」を行う際、シーケンスマーカーの位置がずれてしまうことがあります。これを防ぐには、マーカーのプロパティで「リップルシーケンスマーカー」にチェックを入れておくことが重要です。
この設定をしておけば、リップル編集によってタイムラインの尺が変動しても、マーカーが自動的に追従し、常に正しい位置を指し示してくれます。これにより、再調整の手間を省き、編集の正確性を保つことができます。
マーカーパネルの活用
「ウィンドウ」メニューから「マーカー」を選択すると、マーカーパネルが表示されます。このパネルでは、シーケンスやクリップに設定されたすべてのマーカーが一覧表示され、詳細を確認したり、特定のマーカーにジャンプしたりできます。
機能 | 説明 | メリット |
---|---|---|
マーカー一覧表示 | プロジェクト内の全マーカー(シーケンス/クリップ)をリスト表示 | 全体像の把握、見落とし防止 |
詳細情報確認 | 名前、コメント、デュレーション、種類などを一覧で確認 | 情報整理、共同作業時の共有 |
マーカーへのジャンプ | リスト内のマーカーをクリックすると、タイムラインの該当位置に移動 | 素早いナビゲーション、作業効率向上 |
フィルタリング | マーカーの種類や色で表示を絞り込み | 必要な情報へのアクセス迅速化 |
マーカーパネルを常に表示させておくことで、複雑なプロジェクトでもマーカー情報を一元管理し、効率的な編集作業をサポートします。

YouTubeのチャプター作成は、視聴者の利便性を高めるだけでなく、SEOの観点からも重要です。マーカーを駆使して、質の高いチャプターを効率的に作成しましょう。
シーケンスマーカーを使いこなすためのヒント
さらにシーケンスマーカーを効果的に活用するためのヒントをいくつかご紹介します。
ショートカットキーを積極的に活用する
Premiere Proの操作は、ショートカットキーを積極的に活用することで、作業スピードが格段に向上します。マーカーの追加(Mキー)、マーカー間の移動(Shift+M、Ctrl+Shift+M)、マーカーの削除(Ctrl+Alt+M)など、よく使う操作はショートカットキーを覚え、指に馴染ませましょう。
マーカーの命名規則を統一する
チームで作業する場合や、長期的なプロジェクトでは、マーカーの命名規則を統一することが重要です。例えば、「[修正指示]〇〇のテロップ修正」「[BGM]サビ開始」「[効果音]足音」のように、マーカーの種類や内容がすぐに分かるようなルールを設けることで、他のメンバーもマーカーの意味を理解しやすくなります。
色分けを効果的に利用する
マーカーの色は、単なる装飾ではなく、重要な情報伝達手段です。プロジェクトのフェーズ(例:編集中、レビュー待ち、承認済み)、内容の種類(例:カットポイント、テロップ指示、音声指示)、重要度(例:緊急、通常)など、意味を持たせて色分けすることで、タイムライン全体を俯瞰した際に、編集の進捗状況や注意すべき点を一目で把握できるようになります。
コメント欄を最大限に活用する
マーカーのコメント欄は、編集者間のコミュニケーションや、後から自分が見返したときのメモとして非常に役立ちます。具体的な指示、参考資料へのリンク、作業の意図などを詳細に記述しておくことで、後工程での作業がスムーズに進みます。特に、複雑な編集や、特殊な意図がある箇所には、必ずコメントを残すように習慣づけましょう。
定期的なマーカーの整理とクリーンアップ
プロジェクトが進むにつれて、不要なマーカーが増えてしまうことがあります。定期的にタイムラインを見直し、削除すべきマーカーは削除し、コメントを整理するなど、マーカーのクリーンアップを行うことで、タイムラインの見通しを良く保つことができます。特に、最終的な書き出し前には、必ずマーカーの整理を行いましょう。
まとめ:Premiere Proマーカー機能で編集効率を最大化しよう
Premiere Proのシーケンスマーカー機能は、動画編集のあらゆる場面で役立つ強力なツールです。基本的な操作から応用的な活用術までを理解し、日々の編集作業に積極的に取り入れることで、作業効率を飛躍的に向上させることができます。
特に、長尺のプロジェクト、複数のクリップを扱う編集、チームでの共同作業においては、マーカーを効果的に活用することが、スムーズでミスの少ない編集を実現するための鍵となります。今回ご紹介した内容を参考に、ぜひPremiere Proのマーカー機能をマスターし、あなたの動画編集ワークフローをさらに進化させてください。