Adobe Premiere Pro(プレミアプロ)には、動画編集の効率を飛躍的に高める「マーカー」機能が搭載されています。このマーカーは、まるで動画に付箋を貼るように、特定のシーンに目印を付けたり、メモを残したりできる便利なツールです。例えば、「被写体が笑顔になった瞬間」や「効果音を入れたい箇所」、「クライアントからの修正指示があったフレーム」など、あらゆる編集点や確認事項を視覚的に記録できます。これにより、長時間の編集作業や複数人での共同作業において、作業忘れを防ぎ、スムーズな情報共有を実現します。
私自身も、複雑なドキュメンタリー映像の編集や、YouTube動画のチャプター作成において、マーカー機能を頻繁に活用しています。特に、膨大な素材の中から必要なシーンを素早く見つけ出したり、BGMのタイミングを正確に合わせたりする際に、その威力を実感しています。マーカーを使いこなすことで、編集のスピードと精度が格段に向上し、よりクリエイティブな作業に集中できるようになります。
このガイドでは、Premiere Proのマーカー機能について、その種類から基本的な使い方、そしてプロの現場で役立つ応用術まで、網羅的に解説します。本記事を読み終える頃には、あなたもマーカーを自在に操り、動画編集のワークフローを劇的に改善できるようになるでしょう。
Premiere Proマーカーの種類とそれぞれの役割
Premiere Proのマーカーには、主に以下の3つの種類があり、それぞれ異なる目的で活用されます。これらの違いを理解することが、マーカーを効果的に使いこなす第一歩です。
マーカーは、適用する対象によって「クリップマーカー」と「シーケンスマーカー」に大別されます。さらに、特定の用途に特化した「チャプターマーカー」などがあります。
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1. クリップマーカー
- 対象:個々のビデオクリップやオーディオクリップ
- 特徴:クリップ自体に紐付くマーカーで、そのクリップをタイムライン上のどこに配置しても、マーカーはクリップと一緒に移動します。
- 主な用途:
- 素材クリップ内の重要なポイント(例:被写体のベストショット、特定のセリフの開始点)をマークする。
- 音声素材の特定の音(例:拍手、効果音)のタイミングを記録する。
- 別撮りした映像と音声を同期させる際の目印として活用する。

2. シーケンスマーカー
- 対象:シーケンスのタイムライン全体
- 特徴:タイムライン上の特定の時間軸に紐付くマーカーで、クリップの移動や削除によって位置が変わることはありません(リップルシーケンスマーカー設定時を除く)。
- 主な用途:
- 動画全体の構成における節目(例:シーンの切り替わり、セクションの開始)をマークする。
- BGMや効果音の挿入タイミングを計画する。
- 共同編集者への指示や、後で確認したい作業内容のメモを残す。
- シーケンス全体の編集管理や情報共有に役立てる。

3. チャプターマーカー
- 対象:シーケンスのタイムライン全体
- 特徴:シーケンスマーカーの一種ですが、DVDやBlu-rayのチャプターポイント、またはYouTubeのタイムスタンプ(目次)として機能させるために使用されます。
- 主な用途:
- 長尺動画の視聴者が特定のセクションにジャンプできるようにする。
- YouTube動画の概要欄にタイムスタンプを自動生成する際の基準とする。
- DVD/Blu-rayオーサリング時のチャプター設定を効率化する。

その他のマーカー
Premiere Proには、上記以外にも以下の種類のマーカーが存在しますが、一般的に使用頻度は高くありません。
- セグメンテーションマーカー:ビデオの範囲を決め、ワークフローを自動化するために使用されます。
- Webリンクマーカー:特定の箇所にURLを設定し、映像再生中にWebページと紐付けることができます。
- Flashキューポイント:Flashムービー再生中にテキスト表示やイベント発生させるためのポイントです。
マーカーの基本操作:追加・移動・削除
ここからは、Premiere Proでマーカーを実際に操作する基本的な手順を解説します。
マーカーの追加方法
マーカーを追加する方法はいくつかありますが、最も一般的なのはショートカットキー「M」を使用する方法です。
- マーカーを追加したい位置に再生ヘッド(現在の時間を示す縦線)を移動させます。
- キーボードの「M」キーを押します。
再生ヘッドの位置にマーカーが追加されます。クリップが選択されていない状態であればシーケンスマーカーとしてタイムライン上部に、クリップが選択されている状態であればクリップマーカーとしてそのクリップ内に表示されます。

「M」キーはマーカー追加の基本ショートカットです。慣れてくると、再生ヘッドを動かしながら連続でマーカーを打つことができるようになり、作業効率が格段に上がりますよ!
マーカーの移動とデュレーション設定
追加したマーカーは、後から位置を調整したり、範囲を指定したりすることができます。
マーカーの位置を変更する
マーカーを直接マウスでドラッグすることで、左右に移動させることができます。時間スケールが小さくて見づらい場合は、タイムラインのズームイン・アウトで調整しましょう。
マーカーのデュレーション(長さ)を設定する
マーカーに「ここからここまで」という範囲を持たせることで、特定の区間をマークできます。これは、作業が必要な範囲を明確にしたり、動画のセクションを視覚的に区切る際に非常に便利です。
- Windowsの場合は「Alt」キー、Macの場合は「Option」キーを押しながら、設定済みのマーカーをクリックします。
- マーカーが左右に割れたような表示になるので、片方をドラッグしてデュレーションを調整します。

デュレーションを設定したマーカーは、タイムライン上で帯状に表示されるため、一目で範囲を把握できます。特に長尺の動画編集では、この視覚的な情報が大きな助けになりますよ。
マーカー間の移動(ショートカット)
複数のマーカーを設定した場合、ショートカットキーを使って素早くマーカー間を移動できます。
- 次のマーカーへ移動:「Shift + M」
- 前のマーカーへ移動:Windowsは「Ctrl + Shift + M」、Macは「⌘ + Shift + M」
これらのショートカットは、タイムライン上を素早く移動し、特定の編集点にジャンプする際に非常に役立ちます。特に、細かなカット編集やBGMのタイミング調整で真価を発揮します。
マーカーの削除方法
不要になったマーカーは簡単に削除できます。
- 削除したいマーカーの位置に再生ヘッドを移動させます。
- Windowsは「Ctrl + Alt + M」、Macは「⌘ + Option + M」を押します。
すべてのマーカーを一括削除する
選択したクリップ、またはシーケンス全体のマーカーを一度に削除することも可能です。
- Windowsは「Ctrl + Alt + Shift + M」、Macは「⌘ + Option + Shift + M」
マーカーに情報を付与して管理する
マーカーは単なる目印だけでなく、詳細な情報を付与することで、より強力な編集ツールになります。
マーカーオプションの開き方
マーカーに情報を付与するには、「マーカーオプション」パネルを開きます。
- 編集したいマーカーをダブルクリックします。
- または、再生ヘッドをマーカーの位置に合わせ、「M」キーを2回押します。
名前とコメントの入力
マーカーオプションでは、以下の情報を入力できます。
- 名前:マーカーのタイトルや簡単な内容を記入します。(例:「BGM開始」「要修正:テロップ」)
- コメント:より詳細なメモや指示を記入します。(例:「このシーンで感動的なBGMをフェードイン」「クライアントから指示あり、〇〇のカットを検討」)

名前とコメントは、共同編集者との情報共有だけでなく、時間が経ってから自分自身がプロジェクトを見返した際にも、何を意図したマーカーなのかをすぐに思い出せるようにするために非常に重要です。具体的に記述する癖をつけましょう。
マーカーの色の変更
マーカーオプションでは、マーカーの色を変更することもできます。 例えば、「要修正」は赤、「BGM挿入」は青、といったように、用途に応じて色分けすることで、タイムライン上での視認性が向上し、作業内容を瞬時に判別できるようになります。
リップルシーケンスマーカーの重要性
シーケンスマーカーを使用する際に特に注意したいのが、「リップルシーケンスマーカー」の設定です。この設定が有効になっていると、タイムライン上でクリップの削除や挿入によって尺が変更された場合でも、マーカーがその変更に追従して自動的に移動します。
リップルシーケンスマーカーにチェックが入っていないと、カット編集などでタイムラインの尺が変わった際に、マーカーの位置がずれてしまう可能性があります。常にチェックが入っているか確認する習慣をつけましょう。
マーカーパネルを使いこなす
Premiere Proの「マーカーパネル」は、プロジェクト内のすべてのマーカーを一元的に管理できる強力なツールです。このパネルを活用することで、マーカーの検索、フィルタリング、編集が格段に効率化されます。
マーカーパネルの表示方法
マーカーパネルは、通常、タイムラインパネルやプロジェクトパネルなどと同様に、ワークスペースの一部として表示されています。もし見当たらない場合は、「ウィンドウ」メニューから「マーカー」を選択して表示させることができます。
マーカーパネルの機能と活用法
マーカーパネルには、以下のような便利な機能が備わっています。
- マーカーのリスト表示:プロジェクト内の全てのマーカーが、タイムコード、名前、コメント、色などの情報と共に一覧表示されます。
- ソート機能:タイムコード順、名前順、色順などでマーカーを並べ替えることができます。これにより、特定の種類のマーカーを素早く探し出すことが可能です。
- フィルタリング機能:特定の名前やコメントを持つマーカー、特定の色が付与されたマーカーのみを表示させることができます。例えば、「要修正」とコメントに入力したマーカーだけを抽出して確認する、といった使い方ができます。
- マーカーの編集・削除:パネル上で直接マーカーの名前やコメントを編集したり、不要なマーカーを削除したりすることも可能です。
- タイムラインへのジャンプ:リスト上のマーカーをクリックすると、タイムラインの再生ヘッドがそのマーカーの位置に移動します。これにより、目的の編集ポイントへ瞬時にアクセスできます。

マーカーパネルは、特にプロジェクトが大規模になったり、多くのマーカーを設定した場合にその真価を発揮します。日頃からパネルを活用して、マーカー管理の効率を上げていきましょう。
プロが実践するマーカーの応用テクニック
基本的な使い方をマスターしたら、次はプロフェッショナルが実践している応用的なマーカーの活用法を見ていきましょう。
1. BGMや効果音のタイミング合わせ
動画編集において、BGMや効果音のタイミングは非常に重要です。マーカーをBGMのビートや盛り上がりに合わせて事前に打っておくことで、後から音素材を配置する際に、正確なタイミングでカットイン・カットアウトさせることができます。特に、複数の音素材を重ねる場合や、複雑なリズムに合わせて映像を編集する際に役立ちます。
BGMの波形を見ながら、マーカーを打つのが効果的です。波形のピークや谷に合わせてマーカーを配置することで、視覚的にもリズムを捉えやすくなります。
2. 共同編集時の指示やメモ
複数人でプロジェクトを進める場合、マーカーはコミュニケーションツールとしても非常に有効です。例えば、「このシーンはもう少し明るくしてほしい」「ここのテロップのフォントを変更」といった具体的な指示をコメント欄に残しておくことで、他の編集者がその箇所を見たときに、何をするべきかが明確になります。また、後で自分で見返すためのメモとしても活用できます。
3. YouTube動画のチャプター作成
YouTube動画の概要欄にタイムスタンプ(チャプター)を設定すると、視聴者は動画の好きな箇所にすぐにジャンプできるようになり、利便性が向上します。Premiere Proのチャプターマーカー機能を使えば、このチャプター設定を効率的に行うことができます。タイムラインにチャプターマーカーを打ち、その名前としてチャプターのタイトルを入力しておけば、YouTubeへのアップロード時に自動的にチャプターが生成されるようになります。

YouTubeのチャプター機能は、視聴維持率の向上にも繋がると言われています。長尺の解説動画やチュートリアル動画などでは、積極的に活用したい機能ですね。
4. 編集作業の進捗管理
プロジェクトが長くなると、どこまで編集したか、次に何をすべきか分からなくなることがあります。マーカーを使って「編集開始」「カット編集完了」「カラーグレーディング開始」「最終確認」といったステータスを記録しておくことで、作業の進捗を視覚的に管理できます。これにより、作業の抜け漏れを防ぎ、効率的にプロジェクトを進めることができます。
まとめ:Premiere Proのマーカー機能をマスターして編集効率を最大化しよう
Premiere Proのマーカー機能は、単なる目印付けにとどまらず、動画編集のあらゆる場面で作業効率を劇的に向上させるための強力なツールです。クリップマーカー、シーケンスマーカー、チャプターマーカーといった種類を理解し、基本的な追加・移動・削除操作から、マーカーパネルの活用、さらにはBGMのタイミング合わせや共同編集時の指示出しといった応用テクニックまで習得することで、あなたの動画編集ワークフローは大きく変わるはずです。
最初は少し戸惑うかもしれませんが、実際に手を動かしながら様々な場面でマーカーを使ってみることで、その便利さを実感できるはずです。ぜひこのガイドを参考に、Premiere Proのマーカー機能をマスターし、より効率的で質の高い動画編集を目指してください。

マーカーを使いこなすことで、編集作業がより楽しく、そしてクリエイティブなものになるはずです。ぜひ、あなたの動画編集ライフにマーカーを取り入れてみてください!