結婚式ムービーは、新郎新婦のこれまでの歩みや、ゲストへの感謝の気持ちを伝える大切なツールです。その感動を一層深めるために不可欠なのが「音楽」です。BGM一つで、映像の雰囲気は大きく変わり、見る人の心に深く響く作品へと昇華されます。かつて多くのWindowsユーザーに親しまれた「Windowsムービーメーカー」は、シンプルな操作性で動画編集の入門として活用されていました。しかし、2025年現在、その状況は大きく変化しています。
結婚式ムービーにおける音楽は、単なるBGMではありません。映像のテンポを決め、感情を揺さぶり、記憶に残るシーンを演出する「もう一つの主役」と言えるでしょう。選曲から編集まで、細部にこだわることで、ゲストの心に深く刻まれる感動的なムービーが完成します。しかし、その感動を台無しにしないためにも、音楽の「著作権」について正しく理解し、適切な対応を取ることが不可欠です。
【重要】Windowsムービーメーカーの現状と利用上の注意点
Windowsムービーメーカーは、かつてMicrosoftが無料で提供していた動画編集ソフトウェアであり、その直感的な操作性から多くのユーザーに愛用されていました。しかし、2017年1月10日をもって、Windowsムービーメーカーを含む「Windows Essentials 2012」のサポートと配布が正式に終了しています。
現在、Microsoftの公式サイトからムービーメーカーをダウンロードすることはできません。もし「ムービーメーカーを無料でダウンロードできる」と謳うウェブサイトを見つけても、それは非公式なものであり、ウイルスやスパイウェアなどのマルウェアが仕込まれている可能性が非常に高いため、絶対にダウンロードしないよう注意が必要です。
もしお手元のPCにムービーメーカーがインストールされている場合は引き続き使用可能ですが、セキュリティアップデートが提供されないため、最新のOS環境では動作が不安定になったり、予期せぬ不具合が発生するリスクがあります。 そのため、結婚式ムービーのような大切な作品を制作する際には、より安定した現代の動画編集ソフトの利用を強く推奨します。

ムービーメーカーは手軽でしたが、セキュリティ面や機能面で限界があります。特に結婚式ムービーは一生に一度の大切な作品なので、最新の安全なソフトを検討しましょう。
結婚式ムービー制作における音楽著作権の基礎知識
結婚式ムービーに市販の楽曲を使用する際、最も注意すべき点が「著作権」です。個人的な利用であっても、結婚式という「公の場」で音楽を流したり、ムービーに組み込んだりする行為には著作権が関わってきます。
著作権とは?なぜ結婚式で注意が必要なのか
著作権とは、音楽や小説、映画などの作品を作った人が、自分の作品を守るために持つ大切な権利のことです。これは「著作権法」という法律で定められています。
結婚式は家族や友人が集まるプライベートな空間と思われがちですが、式場という「公の場所」で演出の一部として音楽が流されることから、「私的利用」とは認められず、「商用利用」とみなされることがほとんどです。 著作権を侵害した場合、権利者からの損害賠償請求や法的措置を受ける可能性があり、最悪の場合、制作したムービーが上映できないという事態にもなりかねません。
結婚式ムービーで特に重要な「演奏権」と「複製権」
結婚式で音楽を使用する際に特に意識すべき権利は、主に以下の2つです。
- 演奏権:会場のスピーカーを通してCDやデジタル音源を再生する際に必要となる権利です。 多くの結婚式場はJASRAC(日本音楽著作権協会)やNexTone(ネクストーン)といった著作権管理団体と包括契約を結んでいるため、BGMとして流すだけであれば、新郎新婦が個別に申請する必要がないケースがほとんどです。
- 複製権:CDや配信音源から楽曲データをコピー(複製)して、結婚式ムービーのBGMとして組み込む際に必要となる権利です。 これは、市販のCDを購入していても発生する権利であり、個人的な利用目的の複製とは異なります。
結婚式ムービーを自作する場合、この「複製権」の処理が特に重要になります。

市販のCDやダウンロードした音源をそのままムービーに組み込むのはNGです。必ず「複製権」の許諾を得る必要があります。
著作隣接権とは?
楽曲には、作詞作曲をした人の著作権だけでなく、実際に演奏した人(実演家)やCDを制作した会社(レコード会社)などの「著作者以外の権利」も関わってきます。これらは「著作隣接権」と呼ばれ、特に複製や配信といった使い方をする場合に許可が必要になります。
結婚式ムービーに市販の楽曲を組み込む場合、著作権(JASRAC/NexTone)と著作隣接権(日本レコード協会など)の両方の許諾を得る必要があります。
著作権の申請方法とISUMの活用
個人で著作権者や著作隣接権者それぞれに許諾を得るのは非常に複雑で困難です。そこで活用されるのが、一般社団法人音楽特定利用促進機構(ISUM:アイサム)です。
ISUMは、結婚式での楽曲利用に関する著作権・著作隣接権の一括処理を代行する団体です。ISUMに登録されている楽曲であれば、所定の手続きと料金を支払うことで、適法にムービーに組み込むことができます。
ただし、ISUMへの申請は新郎新婦個人では行えません。ISUMに正規登録された結婚式場や映像制作会社などのブライダル事業者が代行して申請を行う必要があります。 自作ムービーを持ち込む場合は、必ず式場や依頼する業者にISUM登録事業者であるか、また使用したい楽曲がISUMに登録されているかを確認しましょう。
著作権フリー音源の活用
著作権の申請手続きを避けたい場合や、ISUMに登録されていない楽曲を使用したい場合は、著作権フリー(ロイヤリティフリー)の音源を活用するのがおすすめです。
インターネット上には、結婚式ムービーに適した著作権フリーのBGMを提供するサイトが多数存在します。利用規約を確認し、適切な範囲で活用しましょう。
【著作権フリー音源サイトの例】
- Jamendo
- フリーBGM DOVA-SYNDROME
- YouTube Audio Library
- Artlist (有料プランあり)

著作権フリー音源は、申請の手間や費用を抑えたい場合に非常に有効です。ただし、サイトごとの利用規約をしっかり確認し、商用利用や二次利用の可否を把握しておきましょう。
Windowsムービーメーカーでの音楽挿入・編集の基本操作(参考情報)
もし、現在もWindowsムービーメーカーがPCにインストールされており、かつ自己責任で利用する場合の音楽挿入・編集の基本操作を解説します。しかし、前述の通り、セキュリティリスクや機能の限界があるため、大切な結婚式ムービー制作には推奨されません。
音楽専用トラックの役割
ムービーメーカーには、写真や動画を配置するメインのトラックとは別に、BGMや効果音、ナレーションなどの音声ファイルを挿入するための「音楽専用トラック」が用意されています。このトラックを利用して、映像とは独立して音に関する編集を行います。
音楽ファイルの簡単な取り込み方法
音楽ファイルをムービーメーカーに取り込む方法は非常にシンプルです。以下のいずれかの方法で、お好みの音楽ファイルをプロジェクトに追加できます。
- ドラッグ&ドロップ:準備した音楽ファイルを直接ムービーメーカーのストーリーボード(タイムライン)または音楽トラックにドラッグして放り込むだけで、取り込みが完了します。
- 「音楽の追加」ボタン:ムービーメーカーの「ホーム」タブにある「音楽の追加」ボタンをクリックし、PC内の音楽ファイルを選択して読み込みます。
どちらの方法でも、音楽ファイルが緑色の帯としてタイムラインに表示され、編集が可能になります。

音楽ファイルを取り込む際は、事前に使用したい曲を一つのフォルダにまとめておくと、作業効率が格段に上がります。
ムービーメーカーでの音楽編集:実践テクニック
ムービーメーカーには、BGMを映像にフィットさせるための基本的な編集機能が備わっています。これらの機能を使いこなすことで、よりプロフェッショナルな仕上がりに近づけることができます。
開始位置・終了位置の調整でBGMを最適化
BGMの開始位置や終了位置を映像のタイミングに合わせることは、ムービーの完成度を高める上で非常に重要です。ムービーメーカーでは、以下の2つの方法で調整が可能です。
- ドラッグによる調整:音楽ファイルを直接ドラッグすることで、直感的に開始位置を調整できます。映像の特定のシーンに合わせてBGMを始めたい場合に便利です。
- 「開始時間」への直接入力:より厳密なタイミングでBGMを開始したい場合は、「音楽ツール」タブの「オプション」から「開始時間」の項目に直接秒数を入力します。例えば、「冒頭の2秒間は無音にしたい」といった具体的な要望がある場合に効果的です。
また、BGMの長さを映像全体に合わせる、あるいは途中で終了させたい場合も調整が可能です。タイムライン上の時間のインジケータ(縦の棒線)をBGMを終了したい時間に合わせ、BGMファイルを右クリックして表示されるメニューから「停止位置の設定」を選択します。同様に、BGMファイルの途中から再生を開始したい場合は「開始位置の設定」を利用します。
フェードイン・フェードアウトで自然なBGMの切り替え
BGMが突然始まったり終わったりすると、視聴者に不自然な印象を与えてしまいます。ムービーメーカーでは、BGMの始まりと終わりに「フェードイン」と「フェードアウト」を適用することで、音量を徐々に変化させ、スムーズな切り替えを演出できます。
フェードイン・アウトの設定は、「音楽ツール」タブの「オプション」から行います。「遅い」「普通」「早い」の3段階から選択でき、それぞれフェードにかかる時間が異なります。
- 遅い:4-5秒程度かけてゆっくりと音量が変化します。
- 普通:3秒程度で自然な変化をつけます。
- 早い:2秒程度で素早く音量が変化します。
結婚式ムービーに最適な現代の動画編集ソフト
Windowsムービーメーカーのサポート終了に伴い、現在ではより高機能で安全な動画編集ソフトが多数登場しています。結婚式ムービーのような大切な作品を制作する際には、これらの代替ソフトの利用を強くおすすめします。
無料の代替ソフト
手軽に始めたい方には、Windowsに標準搭載されている「フォト」アプリや、無料で高機能なソフトがおすすめです。
- Windowsフォト:Windows 10/11に標準搭載されており、簡易的なカット編集、BGM追加、テキストテロップなどが可能です。
- Clipchamp:Microsoftが提供する無料の動画編集ソフトで、Windows 11に標準搭載されています。直感的な操作で、テンプレートも豊富です。
- AviUtl:無料ながら非常に高機能で、プラグインを導入することでプロ並みの編集が可能です。ただし、初心者には学習コストがかかる場合があります。
- Shotcut:Windows、Mac、Linuxに対応した無料のオープンソースソフト。基本的な編集機能に加え、豊富なエフェクトやフィルターが魅力です。
- OpenShot:完全無料で利用できるオープンソースの動画編集ソフト。シンプルなインターフェースで初心者にも扱いやすいです。
有料の代替ソフト
より高度な編集やプロフェッショナルな仕上がりを求める方には、有料ソフトが適しています。
- Filmora:初心者から中級者向けに人気が高く、直感的な操作性と豊富なエフェクト、テンプレートが特徴です。結婚式ムービーの制作にも非常に適しています。
- PowerDirector:国内シェアNo.1の実績を持つ高機能ソフト。AI機能や豊富なエフェクト、高速レンダリングが魅力で、プロレベルの編集が可能です。
- VideoStudio Pro:初心者から中級者向けで、直感的な操作と豊富な機能が特徴。結婚式ムービー向けのテンプレートも充実しています。

無料ソフトでも十分な機能を持つものが多いですが、結婚式ムービーは一生の思い出。予算に余裕があれば、より安定して高機能な有料ソフトも検討する価値があります。
結婚式ムービーの音楽選びと演出のコツ
著作権対策と並行して、ムービーを感動的に彩る音楽選びも非常に重要です。以下のポイントを参考に、最適なBGMを見つけましょう。
ムービーの種類と構成に合わせた選曲
結婚式ムービーには、オープニング、プロフィール、エンドロールなど様々な種類があり、それぞれに合った音楽を選ぶことが大切です。
ムービーの種類 | 目的・内容 | おすすめの音楽ジャンル・曲調 |
---|---|---|
オープニングムービー | 披露宴の始まりを告げ、ゲストの期待感を高める。 | アップテンポで華やか、またはスタイリッシュな曲。 |
プロフィールムービー | 新郎新婦の生い立ち、出会い、馴れ初めを紹介。 | 感動的なバラード、爽やかなポップス、思い出を振り返る温かい曲。 |
エンドロールムービー | 披露宴の締めくくり。ゲストへの感謝を伝える。 | 感動的で余韻を残すバラード、感謝の気持ちが伝わる曲。 |
プロフィールムービーは、新郎パート、新婦パート、二人の馴れ初めパートの3部構成が一般的で、それぞれに異なる曲を選ぶとメリハリがつきます。 ただし、最近は著作権料やゲストの集中力を考慮し、1〜2曲に抑えるケースもあります。
歌詞の内容とメッセージ性
歌詞がある曲を選ぶ場合は、結婚式にふさわしい前向きなメッセージや、二人の関係性、ゲストへの感謝を歌ったものを選びましょう。失恋や別れをテーマにした曲は避けるのが無難です。
映像との調和とテンポ
音楽は映像のテンポを左右します。写真の切り替わりやシーンの展開に合わせて、曲調やリズムを調整することで、より一体感のあるムービーになります。 歌詞が邪魔になる場合は、同じ曲のインストゥルメンタル版を使用するのも効果的です。
音量調整とフェードイン・アウトの重要性
ムービー全体の音量バランスは非常に重要です。BGMが大きすぎてナレーションやセリフが聞こえにくくなったり、逆に小さすぎたりしないよう、適切に調整しましょう。
また、曲の始まりと終わりにはフェードイン・アウトを適用し、自然な音量変化をつけましょう。これにより、プロのような洗練された印象を与え、視聴者に違和感を与えません。

音楽の音量調整は、映像のメッセージを伝える上で非常に重要です。特にナレーションや新郎新婦のコメントがある場合は、BGMの音量を下げて聞き取りやすくする工夫をしましょう。
まとめ:感動的な結婚式ムービーのために
結婚式ムービーに音楽を挿入することは、映像の感動を何倍にも高める重要な要素です。しかし、2025年現在、Windowsムービーメーカーはサポートが終了しており、セキュリティや機能面でのリスクがあるため、大切な結婚式ムービーの制作には推奨できません。
現代の動画編集ソフトは、ムービーメーカーよりもはるかに高機能で安全であり、初心者でもプロのような仕上がりを実現できるものが多数存在します。これらの代替ソフトを活用し、安心してムービー制作を進めましょう。
そして何よりも、使用する音楽の「著作権」について正しく理解し、適切な手続きを踏むことが不可欠です。ISUMの活用や著作権フリー音源の利用など、賢い選択でトラブルを回避し、新郎新婦とゲストの心に深く刻まれる、最高の結婚式ムービーを完成させてください。


